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時が満ちれば 5

 まだだろうか……王様の寝所の警備をしながら、過ぎゆく時が異常に長く重たく感じる。あの赤い髪の女が王様の寝所へ入り、診察を始めてからどの位経ったのだろうか。もしかしたら数分しか経っていないのかもしれぬのに、俺は緊張のあまり額に冷たい汗をかいていることに気が付いた。 「ふぅ……王様の病気は治るのだろうか」  溜息をつきながら、たい汗を拭っていると、白い医官の衣をつけ精悍な顔つきのジョウが現れた。その姿を見るだけで心が落ち着いていくのを感じた。 「ヨウ待たせたな。大丈夫か」 「……ジョウ」 「今診察中なのか」 「あぁジョウは中に入って一緒に診察してきてくれ、俺は誰も立ち入らぬように、ここで護衛をしている」 「分かった。何かあればすぐに呼べよ」 「あぁ」  王様の寝所前で寝ずの番をするのは、いつものことで、この何年間いつも繰り返してきたことだ。なのに今日は何故だか嫌な予感がして溜まらない。  そこに憎きあいつがやって来た。王家の外戚であるキチ…… 「やぁこれはこれはたいそう美人な近衛隊長よ。王様に会うから、取り次げ」  ギクリとしてしまった。なんとも悪いタイミングだ。 「……今は無理でございます」 「ほぅ~それは何故かな」 「診察中ですので……」 「んっ?医官のジョウが来ているのか」 「はい」 「それなら別に構わんだろう、中に入らせろ」 「いえ、それはもう少ししてからにしていただけますか」 「お前はただの臣下のくせに、相変わらず生意気だな」  酒に酔っているのだろう。酒臭い息を撒き散らし目が座っている。撫でまわすような不躾な視線を俺に絡みつけてくるので、まるで裸を見られているような居心地の悪さを感じ、ゾクリとする。  この眼は……この欲にくらんだ眼は、あのお方に似ている。俺を長年凌辱し続けたあの前王に。 「フンっそれなら待っている間、退屈だからお前の躰を触らせろ」 「なっ何をおっしゃるのですか」 「では今すぐ中にいれろ、どちらにするのだ?」 「くっ…」  悔しい……こんな男でも王族の血を引いているなんて。俺はただの臣下に過ぎぬから、どちらかを選べと言われたら後者を選ばざる得ない。なんと悲しい定めだろう。 「さぁちょっとこっちへ来い、お前は断れないはずだろう」

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