「ヨウ、一体どうしたんだ？」 私の声ではっと我に返ったヨウは、額の汗を拭いながら起き上がった。 「あ…なんでもない。少し悪い夢を見ただけ…大丈夫だ」 大丈夫だと強がっているが、身体はまだ小刻みに震えているじゃないか。 君らしくない。いつもの強さはどうした？ 何故今宵は、こんなにも…か弱く見えるのだろう。 そんなヨウの様子を見守るうちに、急に震えるその躰を私の腕の中にきつく抱きしめてやりたくなった。 私はなんでそんな風に思ったのか。 まるで女のようにヨウを腕に閉じ込めたいなんて。 自分の邪な考えに驚き、慌てて追い払うように首を振って気持ちを切り替えた。 ＊＊＊＊ 私は部屋に置いてある着替えと布を、ヨウにそっと渡した。 「ひどい汗じゃないか…着替えたほうがいい」 「あぁ…そうさせてもらう。」 まだ辛そうな夢から覚めやらぬ表情のヨウは、着物の襟元を自分で少し緩め、額や首筋の汗を拭き始めた。 鎧を着て隊長として警護の先頭に立ち任務をこなしている時には、気が付かなかった。 こうして薄い衣で震えている姿は、まだ横顔に少年の面影が残る少し頼りない儚げな青年だなんて… それにヨウの月明かりに照らされた首筋の色白さや、耐えるようにきゅっと結んだ綺麗な形の唇とその甘い色が妙に艶めかしい。 もともと綺麗な顔だとは思っていたが、こんなに艶めかしいなんて… こんなにも弱っているヨウを見るのは初めてだ。 私は突然、今までにない湧き上がるような不思議な甘酸っぱい感情を抱いてしまった。 「何にうなされている？心が少しでも軽くなるのならば、私に話してみないか」 「お前には関係のないことだ！もういいから戻ってくれ！」 少しいらついたヨウの棘のある返事に私は落胆したのか、急に感情が高ぶったからなのかその言葉が氷の剣のように胸に突き刺さった。 「ヨウ！そんな言い方ひどいじゃないか！私は君のことを心配して…」 違う！こんな言葉じゃ足りないんだ！ 次の瞬間、私はヨウの両肩を勢いよく壁に押さえつけ、あろうことか唇を重ねてしまったのだ。 先ほどから下半身から湧き上がる不思議な感情が抑えられなかったのだ。 「えっ」 押さえつけられたヨウは突然の出来事に目を見開いて固まっていた。