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秘められた過去 4

ヨウは突然のことに驚き、闇夜のように暗い色の瞳を大きく見開いていたが、抵抗せずに私の口づけを受け入れてくれた。 ヨウの桜色の柔らかな唇はどこまでも甘く切ない味がして、私は我を忘れて夢中になって吸い続けた。 くちゅくちゅと卑猥な唾液の混ざる音が静かな部屋に響いていく。 どれくらいの時間そうしていたのだろうか、口づけだけでは興奮がとまらなくなってきた私は、そのままヨウの両肩を押さえつけていた手をずらし、着物の袷から中にそっと手を滑らせ、ヨウの滑らかな温かい肌を直に感じ、さらに胸の小さな突起を探った。 「あっ…!」 その途端ヨウはビクッと怯えたような表情をして、慌てて胸元を手で押さえ私から身を離した。 ヨウの怯えた声で、はっと我に返り急に気恥ずかしくなった。冷や汗まで出てきた。 「ジョウ…なっ…何を?」 「すまないヨウ!どうかしていたみたいだ…」 「何故こんなこと?」 「…うっそれは…もう寝ろ。俺も戻るから…その…許せ、どうか忘れてくれ。」 「……」 これ以上淫らな気持ちが自分の中から湧きおこる前にと、慌てて部屋から逃げるように去ろうとすると、ヨウが私の手首を掴んだ。 「…待てよ」 しばしの沈黙の後、ヨウは躊躇いがちに問いかけてきた。 「なんで口づけなんてしたんだ?俺は男だぞ…」 「……」 「いつものお前らしくない…」 「ヨウがうなされていて何かに怯えているように見えて…それで何故だか急に抱きしめてやりたくなって…すまない。」 「ジョウ…そんなことなんで…」 目の前には、月夜の湖のように澄んだ瞳を潤ませたヨウが、頬を赤らめて俯いている。 何故このような言葉が口から出てきたのだろう。 もう自分を抑えられなかった。 ヨウと王のもとで毎日顔を合わせるようになって1年以上過ぎた。 ずっと君を近くで見ているうちに甘く切ない感情はどんどん膨らんでいった。 いつも沈んだ表情のヨウに微笑んで欲しくなった。 ヨウを悩ましているものを取り除いてあげたくなった。 この思いはなんなのか、ずっとずっと私自身が知りたかったことなんだ。 あぁそうか。私はヨウのことが好きだったんだ。 そう思うと唐突に告白の言葉が、自然と口から漏れ出した。 正気の沙汰ではないと思うのに、もう止められない。 「私は君のことがずっと気になっていた」 「えっ…どういう意味だ?それは」 「つまり好きなんだ。女に抱くのと同じ感情だ。ヨウ、私は君のことが好きだ!」

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