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「んー、うま〜。美味いよコレ」
「ちょっと甘過ぎるような気もするんだけど、どう?」
「確かに男からしたらちょっと甘いっスけど、女の子たちにはこれくらいのがいいと思いますよ」
「そう?流石はモテ男、頼りになる」
「…写真映えもするし、いいと思いますよ〜」
「なるほどねえ」
机の向かいに腰掛けながら感心して褒めたのに、新人くんはあまり嬉しくなさそうにパクパクとフォークで口に運ぶ。
作っておいたのはランチにつけようと思っている小さなミニタルトだ。写真映えを考慮するならタルトは3点セットで提供した方が色も増えて可愛いだろうか。乗せるフルーツをどうするか…
脳内で今後の展開を考えつつ、新人君が食べるのを見つめていた。
甘いタルトを食べながら一緒に出したコーヒーを口に含む姿はさながら人気俳優による朝のCMのよう。…にしてもコーヒーの減りが異様に早いな。
「砂糖は?」と聞けば「無糖派」と答えていたが、そういえば彼は甘いもの大丈夫だったっけ?
「今更ながら聞くけど、もしかして甘いの苦手?」
俺の問い掛けに新人くんは最後の一口をパクリと口に含み、流し込むようにコーヒーを飲み干すと空になったカップをソーサーの上を置く。カツンと陶器が触れ合う音がした。
「にがてじゃないです」
「いや絶対苦手じゃん。なんで無理したの?」
なんとまあ嘘をつくのが下手なことか。目がウロウロしている。
「……食べてみたかったから」
観念したのかボソッと呟いた新人くんに思わずキュンとしてしまった。
これは仕方ない。不可抗力だ。彼がそんな可愛いことをするようなキャラだったとは。
きっと彼女が作った砂糖と塩を間違えて作った手料理も「美味しい!〇〇ちゃんマジ料理上手〜」とか言って完食する系男子なんだろうな。凄い。イケメンな上に気遣いもできるって同じ男なのに勝ち目がない。微塵もない。絶望的だ。
「考えてみたら俺結構試作って言って甘いの食べさせてたような…気付いてあげられなくてごめ…」
「あれも仕事なんで!!」
「ん、…あ…そう?」
俺はなんて可哀想な事をしていたのか、と謝ればごめんと言い切る前に食い気味で言葉が返ってくる。
苦手なものを無理に食べるのも仕事のうちって…若いうちから将来有望な社畜じゃないか。新人くんの未来が心配になる。
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