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どれくらい経ったんだろう。いつのまにか眠りに落ちていた俺は、込み上げてくる気持ち悪さに目が覚めた。
部屋の中はまだ真っ暗で、とにかく慌てて飛び起きトイレへと駆け込む。胃の中のものをすべて吐き出した後、ふらふらしながらトイレを出てすぐ横の洗面台で口の中を濯いだ。
「きもちわる…」
洗面台の冷たいタイルに片手を添えた状態で、ずるずると体の力が抜けて行き視界が下がって行く。
体は鉛のように重く、関節に痛みを感じる。頭もガンガンと金槌で何度も殴りつけられているみたいに痛い。
「……はあ…」
風邪をひいたのだと気付いた。
それも久々に酷いやつ。
昨日から咳が出るなと思っていたがどうやらあれは風邪の初期症状。そして悪化した。分かりやすい展開に我ながら呆れてしまう。
明日は大学が休みで、朝からシフトに入っていた筈。店長は昼から出勤になっていたから、朝は少し人が少ない。回せるかな…?どうだろう。忙しい時間には店長も居るし大丈夫か。
とにかく朝になったら熱を計って、病院に…いやその前に店に電話して……駄目だ、頭が上手く働かない。寝よう。ベッドに戻って…ああ、もういいや。このままここで寝る。どうにも動けない。
手の届く位置にストックしておいた数枚のバスタオルを棚から引き摺り出して枕と布団代わりに体にかけた。帰ってすぐにエアコンはつけたから、悲鳴を上げるほど寒くはない。
なのにぶるり、と寒気が走る。
これ俺、朝になったら死んでるんじゃない?
洒落にならない事を考えたが、笑う余裕もない。意識を手放すように目を閉じた。
ーーー
「……う」
デジャヴのような気持ち悪さを感じて眉を顰めながら瞼を開ける。先程とはうって変わって部屋の中は明るい。手始めにトイレに駆け込んでみたが、今度は何も出なかった。
寝て起きても症状は何一つ変わっていない。強いて言えば視界がグルグルして、より悪化していることぐらい。遠かった天井が今度は渦巻いて落ちてくるような気さえする。
さすがにもう床で寝る気にはなれず、いつ倒れてもおかしくないような足取りで必死にベッドへと向かった。
するとベッドの上に放り投げたままだった携帯が、マナーモードのまま画面を光らせていた。
表示されるのは「店長」の二文字。
機能していなかった脳が一瞬にして覚醒し、どこにそんな力が残っていたのかと自分でも驚くほどの早さで携帯を耳に推し当てる。
「…も、しもし…!」
『あっ!やっと出た。新人くん大丈夫?』
聞こえてきたのはもちろん大好きでたまらない人の声だった。
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