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繊細な心に傷を負う事件の後、恋愛から遠退いていた俺に再び恋する気持ちを思い出させてくれた彼女。が紹介してくれた新人くん…
「…なんだこの巡り合わせ…」
彼が何故俺の出演AVを持ってるんだろう。そもそもAVをバイト先に持ってくるってどういうこと?しかもゲイビ。濃すぎやしないか。
はあ、と深い溜息を吐きながら俺の机がある事務室で本日の売り上げを本社に転送作業をしているとヒョコと誰かが顔を覗かせた。
「テンチョ、おつかれさまでーす」
「!!?」
ガタガタッと分かり易すぎる程驚いてしまい椅子が大きな音を立てた。
帰り支度が済んだのかネイビーのコートに身を包んだ新人くんが事務室に入ってくる。そういえば今日はフルの日だったか…
「あ、ああ。おつかれ。どうかした?」
「えぇ?もー、テンチョ!俺が忘れてたらどうするつもりだったんスかあ」
そう言いながら新人くんが二つ折りにされた紙を手渡してきた。一瞬何を渡されたのか分からなかったが「シフト、遅くなりましたー」の一言でハッとする。
「お、ありがとう」
「来月は結構出られるんで」
「本当?助かるよ」
「……じゃ、俺はこれで」
「ちょっと待って!」
思わず引き留めてしまってから、何やってるんだと後悔。不思議そうに振り返る彼の整った顔立ちにウッと言葉に詰まった。
いつもそうだ。彼は俺と2人きりになると一言二言交わすと直ぐにこの場を離れてしまう。そりゃ6歳も離れてたら共通の話題なんてなかなか見つからないのかも知れないけど…今日は思わず呼び止めた。
真っ直ぐにこちらを見つめてくる幅広な二重の大きな瞳。すぐさま外に出るつもりだったのか黒いマフラーで鼻と口が隠れているので、目力がいつも以上に強く感じた。
呼び止めたはいいが何を聞くつもりなんだ、俺は。
なんでゲイビ持ってきてるの?とか?別に何を持ってこようと彼の自由だ。ならば、そのゲイビどうしたの?そういう趣味?とかはどうだろう。
…いや、それこそ完全に彼の自由だ。俺の踏み込む領域じゃない。そもそもゲイビについて聞いてしまうと俺が彼の私物を勝手に見たことがバレる。もしそれを彼が本社に伝えでもしたら…
「店長?」
グルグルとあーでもないこーでもないと考えている俺に痺れを切らしたのか、新人くんか怪訝そうな声を上げた。そしてその一言に焦った俺が出した答えは…
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