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新人くん side.

批判を受けることを覚悟で言えば俺は昔からとにかくよくモテた。 ただ俺が好意を持った相手には振り向いてもらた試しはない。22年間生きてきて一度たりとも。 何故かって? 答えは簡単。 俺が好きになる相手が同性である男であり、かつ好きな相手には話しかけることさえ躊躇する超が付くほどの奥手だからだ。 よく言われる台詞がある。 「百発百中、お前に落とせない女は居ない」 これだ。 まあ、否定はしない。落とそうと思ってなくても女は笑いかけるだけで落ちる。自分が比較的整った顔立ちをしていることも自負している。顔は若い頃にモデルをしていた母親の遺伝だし、高い身長は父親譲り。上手いこと、いいとこ取りをできた。 だけど俺が好きになる相手はいつも男。それも男に興味なんか無いノーマルな奴ばっかりだ。 笑いかければ落ちる女じゃない。俺がどんなに精一杯、渾身の力で笑いかけても相手は落ちない。 「なんだよ、今日はよく笑うな。また可愛い子でも釣れたのか?」なんて言われるばかり。釣りたいのはお前だなんてサラッと言えたらどんなにいいか… 「失恋なんてしたことないんだろ」 これもお決まりの台詞。馬鹿なことを言うなと言い返してやりたいくらいお門違いな台詞だ。 失恋だって何度繰り返してきたかわからない。 もちろん告白なんて一度もした事はないので、大抵好きな相手に彼女が出来て自分の中で相手の幸せを祈って終了する。見た目だけなら自信に満ち溢れた男なのに、なんと情けないことか。 俺は、自分の気持ちを伝えられない。 手を握ることも、抱き締めることも、ヤキモチを焼いてそれを相手に伝えることだって――俺には到底できやしない。 ただ友達として傍に居るだけ。 そいつの好きな女の子を釣る顔のいい男として、いいように使ってくれたら、役に立てるなら、それでいい。 気持ちを伝えて、拒絶される方がよっぽど辛い。 これで、いい。 俺はずっとこのままで…

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