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店長 side.

あれから数日経った。 大混乱の中、口にした例の失言。もう俺の中であれは失言の部類に振り分けられている。 やらかしたと頭を抱えていたのに、新人くんは特に何もアクションを起こしてこなくて正直拍子抜けだった。 冷やかして欲しいわけじゃないが、どうしてDVDを持っていたのか真相を知りたい。なんで?どうして?どういうこと?と、モヤモヤが募る。 店の裏のドアから外に出て、この寒い中電子タバコを口に咥えてもう20分になるだろうか。葉っぱを燃やそうが、電子式になろうが喫煙者の肩身は狭い。 そろそろ戻るか、と電子タバコを消していると不意に携帯が震えた。 「………」 表示を見て、一度携帯を裏返す。細かい傷の付いた携帯カバーの背面を見つめ、もう一度ひっくり返して表示を確認。 何度見ても変わらない着信相手の名前と、震えの止まらない携帯電話。 現実を理解した瞬間、俺の体まで震え出して過去のトラウマが蘇った。 ーーー 「テンチョ〜どうしたんっスかあ?溜息ばっかぁ」 午後の勤務の最中。仕事は仕事と割り切っていた筈だが、無意識に溜息を連発していたらしい。 新人くんに指摘されて「うわあ…」と自己嫌悪。従業員、それも6歳も年下の男の子に心配される程、態度に出ていたなんて意識が低すぎる。 「ああ、ごめん。なんでもないです。気にしないで」 時間帯的には空いている。新人くんもテーブルの片付けを終えて、水をピッチャーに移し入れ中だ。オシャレなカフェにはオシャレなピッチャー。もちろん爽やかな黄色が美しいレモン入り。 「そお?でも最近ずっと元気ないよーな気がしてんスけど」 元気がないのは君のDVD事件の所為です。 「俺は元気だよ。でもなんでだろ…もしかして最近お酒飲んでないからかな」 飲酒を控えてるのは事実だ。この年になると一度肉が付くとなかなか消えない。 腹回りに肉が付くのだけはなんとしてでも回避したくて、丁度この一か月前ぐらいからお酒の代わりに炭酸水を飲んでいる。 俺の言葉に新人くんは、空のピッチャーに手を伸ばし水を足し入れながら「じゃあ」と声を上げた。 何故か視線はこちらではなく手元のピッチャーのままだ。 「今日、飲みに行きません?」

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