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「マジ!?テンチョ、あいつのこと好きだったんスか?」 「絶対に言わないでくれよ。ちょっと好きになりかけてたんだ。まさか結婚を考えてる彼氏がいるなんて思わなかったし」 「……へー」 新人くんと二軒目に突入、そのままエンジンが掛かって三軒目で日本酒を飲み干した頃には俺もだいぶ出来上がっていて過去の恥ずかしい片想いを暴露していた。 おでんがメインの居酒屋のカウンターで並んで酒を飲む。新人くんは酒に強いのか俺と変わらず飲んでいる筈なのに顔色は白いままだ。イケメンなうえに肌も白く、チャラついてないとどことなく儚さも感じる。凄い子だよね、ほんと。 俺の暴露話に相槌を打って、同じように頼んでいた日本酒を口に運ぶ。黄金色に透ける大根を箸で割る姿に同じ男ながら感嘆の声が漏れた。 「ほんとに、格好いいよねえ」 「え、……俺スか?」 「君以外に誰がいるんですか。なんで彼女とか作らないわけ?本命作ると他の子と遊べなくて面倒臭いとか?」 「ひっど!テンチョ俺のことなんだと思ってんの?」 「チャラ男?」 2回目の「ひっど!」が聞こえる。 仕方ないだろう。俺の生きてきた中で誰よりもチャラい君が悪い。 本社にもこういうチャラついてるけど口が上手くて仕事のできる営業マンが居たのを覚えている。同時期に中途入社したこともありなんだかんだで仲良くしていたが、彼も相当モテていて本命を作る必要性を感じないとかふざけたことを言っていたっけ。 彼は元気にしているんだろうか。あいつよりは先に結婚したいと僅かなライバル心を燃やしている。 「次何飲もうかな」 「まだ飲むんスかあ?もうやめといたら?」 「バカ言え。夜はこれからでしょう」 「…テンチョって、仕事以外だと意外と口が悪いんだね」 「店長の俺にタメ口きいてくる君には何も言われたくない」 「はは、すんませーん」 新人くんが笑う。そういえば今日初めて見る笑顔だ。誘ってきたわりには不機嫌――とまではいかなくても、随分と大人しかったから。

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