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「ちょ、っと待って…待って」
「大丈夫。怖くないよ」
「いや、あの……怖いとか怖くないとかじゃなくて…」
「俺に任せていいから…」
「やっ…だから…っ待ってください!店長!」
覆い被さるようにして服を脱がそうとしてくる店長の肩を両手で思いっきり掴んで何とか制止させた。
攻防を繰り返していたせいか息が上がる。体格的には俺の方が上なのに、これから店長を抱くという現実に緊張で手が震えて思うように力が出ない。
そりゃあ、あんな条件出しときながらいざ行為を始めようとしたら怖気付いてグダついてしまった俺も悪いと思う。
「本当に本気で言ってます?」「後悔しませんか?」「後になってやっぱり本当はしたくなかったのにとか言わないですよね?大丈夫ですか?」とチャラ男キャラ崩壊でガチトーンで質問攻めにするくらい俺も焦ってるんだ。
そして、痺れを切らしたのか店長が馬乗りになって来たあたりから主導権が変わった。
「新人くん、腹くくろうか。オッケーだしたのに、やっぱりやめたは無しだよね?」
「やめたっていうか、本当にいいのかなっていう…俺なんかで」
「こんなに格好いいのに!?何言ってるんだ!」
「そっ、そういうんじゃなくてぇ」
店長すぐに俺のこと格好いいとかイケメンとか言ってくるのマジでやめてほしい。いちいちテンション上がっちゃってんの知らないだろ。
「その気になれないなら、舐めよっか?元カノにもよくぺ…」
「言わなくていいっス!むしろ言わないで!」
聞きたくもないセリフが飛び出てきそうになって慌てて店長の口を塞いだ。好きな人には清純でいて欲しいとは言わないが、元カノとのセックス話は聞きたくない。電話で聞いた声を思い出して苛立ちを覚えた。この人に何やらしてんだよ!
「舐めなくても大丈夫です、から。やる気は、あります」
今は緊張のせいで若干萎えてるけどきっと大丈夫。性欲は並にある。
「なんか新人くん、キャラ違うね…俺そっちの方が好きかも」
「好…」
「隙あり」
片手を掴まれて再びソファーに押し付けられた。酔ってるくせに店長意外と力強い。既に自分がパンツのみのほぼ裸だということに気付いてるのかな。
アルコールが入ると無茶苦茶な思考に陥る人なのか、あるいはムラムラしちゃう人なのか。ゲイビで泣いてた人とは思えないほどの行動力に、目が据わったままなのがなお恐ろしい。
「さあ、早くしよう。新人くん」
妖艶に笑って俺の首筋に口付けてくる店長の夜の顔にドキドキが止まらない。
そして「想像してたのと違う…!!」と叫びだしそうになるのをなんとか我慢した俺を、できることなら褒めて欲しい。
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