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大正15年1月10日、雪

最近、零一様の様子がおかしい 表情も暗くて、元気がない 事業がうまくいっていないというようなことを屋敷の中で聞いた 月に一度の逢瀬の日。 雪なのに、零一様は傘もささずにやって来た。 黒いコートには雪が積もっていた。 僕はヤカン温め、お茶を淹れる。 「少し温まってください」 一言も発せず、零一様は黙々とお茶を飲んだ。 飲み終わると、急に僕に口づけをした。 そのまま寝台の上に二人で倒れ込んだ。 舌が絡み、息が出来ないくらい激しい口づけに寝台が軋む。 その間、零一様は僕の帯を解いて、慣らし始めた。 いつもよりも性急な態度に、僕は少し戸惑った。 「ミツ!ミツ……っ!」 パンパンと必死に腰を打ち付けられ、執拗な責めに僕は息もつけないほどで、少し苦しく、涙が目尻に溜まる。 「ミツ……っ好きだ……愛してる……!」 切ないくらいの愛の囁きが、僕の官能を刺激する。 せりあがるものを止められず、僕らは登り詰め果てた。 眠りについた頃、僕は息苦しさに目が覚めた 声を出そうにも、出せなかった。 零一様が馬乗りになって僕の首を絞めていた 霞む視界。 首に巻き付く指に手をかける。 ポタリと何かが頬に当たった。 目をなんとか開けると、零一様は泣いていた。 僕はその顔を見て、抵抗するのをやめた。 いいですよ。 それであなたの気が済むなら。 そう心の中で語りかけると、零一様の手の力が緩んだ。 閉じかけていた気管に酸素が一気に入り、僕は咳き込んだ。 「ミツ……すまない……すまない」 強く強く抱き締められた。 「苦しいんだ……ミツ。この世界にいるのが、苦しいんだ。この部屋から、楽園から出たくない。出たら最後、この世界に押し潰されそうで……」 「ここは、あなたの楽園です。いつだって、あなたを迎え入れます」 「ここだけなのか?楽園は」 零一様は絶望しているようだった。 「逃げよう、ミツ。新しい楽園を見つけにいこう」 ギラギラとした目が僕を貫く。 僕は壊れていきそうな零一様が怖かった。 「……お子様は、芳子様はどうなるのですか?」 「そんなもの……」 「僕との子供だと言ってくれたじゃないですか!」 僕は強く零一様の肩を揺さぶった。 目を覚まして欲しかった。 「……そう、だったね。私は、どうかしてた……子供が生まれるまでは、頑張らなければいけない……」 脱力したように、零一様はそう呟いた。

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