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大正15年2月10日、曇り
ちょうど零時を回った頃
屋敷に産声が上がった
零一様は、お生まれになった子を抱き上げた
「名前はどうしましょう?」
芳子様は穏やかな母の顔で微笑んだ。
零一様はあやしながら、こう言った。
「零夜にしようと思っている。この子は夜に生まれたから」
零一様は、芳子様に分からないように、ちらりと一瞬だけ僕を見た。
その目線と零夜という名前を聞いたとき、嬉しくて仕方なかった。
嬉しすぎて、僕はトイレに行って泣いた。
零夜の零は零一から、夜は三ツ夜から取ってくれた
そう言われた訳ではないのに、僕はそう感じた
だってあの子は、零一様と芳子様と、僕の子だから
「零夜」
僕はこの名前を何度も何度も呟いた。
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