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第98話
それから少し経って、部屋に春臣が来た。
春臣『出来た…けど、どうした。』
明らかに様子がおかしい鈴華。
鈴華『ううん、何も無いよ?』
ご飯ご飯と、部屋から出ようとする鈴華を引き止める。
春臣『何も無いわけない、俺何かしたか?』
その問いかけにも首を横に振る。
鈴華『本当に何も無いのに。』
何も言う気配の無い鈴華にもどかしさを感じる春臣。
春臣『言わないと、離さない。』
掴んだ腕を自分の近くへ引き寄せる。
鈴華『机の上の時計…綺麗なのに壊れてる。』
春臣『うん?』
鈴華『大切なものなの?』
どうして恋人でもないのに、これ程胸が締め付けられるのか。
勘弁してほしい。
春臣『それでそんな顔してるのか。』
あまり笑わない春臣がふっと微笑んだ。
春臣『これは俺の祖母がくれたんだ、今は亡くなっちゃったけど憧れの人だからな。壊れても捨てられなくて。』
鈴華『憧れの人…素敵だね。』
そして何故かニヤニヤする春臣。
春臣『嫉妬?元カノからとか思ったのか?』
鈴華『ちがっ!…まぁ最初はそう思ってたけど。
どうしてか、おみの事を何も知らない自分に腹たっただけ。』
少し拗ねるようにふいと顔を背けると、頭を撫でられた。
春臣『飯作ったからそれ食べて機嫌直せ。』
そのまま手を引かれてリビングへ行くが、最中にいい匂いがした。
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