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春・ポチくんの憂鬱-2

四人はお花見を楽しんだ。 凪を抜かせば全員成人、お酒も結構飲んだ、普段ならばシンジが「未成年のいる場で酔っ払うのは」と深酒を控えさせるのが恒例になっていたが今夜は特別措置がなされた。 月夜に舞う桜吹雪、それぞれの隣にはそれぞれの想い人。 春の息吹にそそのかされて、ついつい、お酒も進んで……。 「帰んのめんどくせぇ! 今日はここで寝る!」 「風邪引くよ、黒埼君……ほんとう、かわいいんだから……俺に一体どうしてほしいの」 レジャーシートの上で豪快に寝転がった六華に膝枕してやるシンジを見、一人オレンジジュースを飲んで大好きな焼き鳥を食べ続けていた凪は思わず笑った。 シンジさんが酔ってるの、初めて見た。 サッキーのこと、すごく構ってあげてる、面倒見のいいお兄さんみたい。 純粋というか鈍感な凪は知らなかった、この二人がお付き合いしていることを。 捕食者が持つ天性の勘の鋭さでとっくの昔に部下の色恋沙汰を察していた蜩は提案した。 自宅に全員泊まっていけばいいと。 よってタクシーで移動して四人は蜩宅へ。 「クンクン! なんかイイ匂いすんな!」 初めて訪れる部屋に六華は興味津々、しょっちゅう掃除やら買い出しやらプライベートでもこき使われているシンジは勝手知ったる風にお湯を沸かす、凪はリビングの端っこでふわぁと欠伸を。 こどもはもう寝る時間だと、隣に立った蜩に揶揄されると、むっとして「まだ起きてられます、アイス食べれますっ」と言い返した。 「俺と黒埼君、どこで寝ようか」 「なんか寒ぃ、なぎっち、カイロ代わりになれ」 「うんっ」 「いやいや、甘やかさなくていいから、凪君、暖房つけるからいいよ」 勝手に上司宅の空調を操作しているシンジ、レザーソファの上ですでにこっくりこっくり寝かかっている六華、一人で泊まったことはあるが複数での初お泊まりにワクワクする凪。 そんな年下の恋人に蜩はこっそり耳打ちした。 自分のベッドで俺のカイロになってくれるよね、なんて。 「っ……ならないです! 俺っ、カイロじゃないし! 擦ってもあったかくならないし!」 六華と比べて蜩には何だか当たりが強い凪なのだった。

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