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迷いうさぎはさみしがり-4

「はーーっ……はーーっ……はーーっ」 とある真夜中のことだった。 寝室に設置してあるパソコンデスクで持ち帰った仕事をポチポチやっていた多岐は、静寂に紛れる苦しげな寝息に気付くなり勢いよく立ち上がった。 「ねむ?」 リビングのソファで毛布に包まって寝ているねむの元に駆けつけてみれば。 汗をかいて、口を大きく開けて、熱もつ呼吸をアップテンポで繰り返していた。 額に手をあてがってみれば伝わってきた異常な熱。 「どうした、お前、風邪でも引いたのか」 緊迫した呼びかけにねむの瞼はゆっくりと持ち上がった。 浮ついた視線がすぐ頭上に迫る多岐に力なく注がれる。 「大丈夫か? 腹痛、頭痛は? 吐きそうか?」 しっとり湿った髪を優しくかき上げられ、兎耳を撫でられて「ん」と小さな声を洩らした。 柔な両手で大きな手に縋りつく。 額を押しつけ、鼻をくっつけて匂いをかぎ、頬擦りして。 「ねむ」 骨張った長い指をぱくっと咥えた。 半開きの、とろんとした目で、ちゅぅちゅぅちゅぅちゅぅ、吸い上げた。 「おい……何やってんだ、お前」 幼児がえり……か? 月にいる母親を恋しがって、会いたがっての指しゃぶり……か? 「ねむ。くすぐったいぞ」 「……タキ……」 「水、持ってきてやるよ」 やたら熱く感じる口内から指を引き抜き、ざわつく胸を何とか抑え、多岐はキッチンへ向かおうとした。 「や」 ねむは多岐が離れるのを拒んだ。 スウェットにパーカーを羽織っていた彼の腰に抱きつき、次は背中の匂いをスンスン嗅ぎ、しつこく頬擦りした。 「や……タキ……行っちゃ、や……」 「すぐ戻ってくるから、つーか……どうしたんだ、ねむ」 「いっしょ、いて……おれと、ずっといっしょ……いて……?」 ぎゅーーーーっと抱きついてきたねむを突き放すことができずにその場で硬直していた多岐は、どんどん加速していく鼓動に周章した。 おい、相手、うー族だぞ、月の住人だぞ。 男だぞ。 それに、まだ、こども、 「うーの、発情、きた……」 ……は? ……今、ねむの奴、何て言った?

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