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いらっしゃいませ平凡くん-5

「寒いね」 新しそうな二階建てアパートの角部屋。 帰宅したばかりの室内は外よりも寒い気がする。 明かりも点けないで、自分がコートを脱ぐ前に、三神さんは俺の手袋に手を伸ばした。 右手、左手、一つずつ外される。 外した手袋をおれのダッフルコートのポケットに入れ込むと、そっと、両手を纏めて握ってきた。 「俺から誘ったのに。一人にして、心細くさせてごめんね」 あ。どうしよう。今ちょっとしんじゃいそうだ。 「大丈夫、です、はい」 「ねぇ、由井君」 「うん」 「今日、泊まる?」 えーーーーーーーーーっ。 「え、あ、えっと」 「だって。俺と由井君、付き合ってるんだし」 そう。 ありえないことに。 おれと三神さんは恋人同士……我ながら変なの。 「あの、でも、家にそんなこと全然、ていうかお泊まりとか今まで一回も、」 いきなり。 ちゅって、キスされた、口に。 「泊まって?」 「………………はい」 うん、きっとおれは一生三神さんをお断りできないです、誓います。 「嬉しい。ありがとう」 ところでいつ明かり点けるのかな、こう暗いと心臓に悪い、変な空気感に発作が起こりそう……。 「震えてる」 「っ、寒いから」 「お風呂入る?」 そ、そっか、お泊まりだからお風呂借りないと、三神さんちでお風呂って緊張するけど、入らないで不潔って思われるのも、あれ、でも着替えとかどうしよう、 「いっしょに入る? 入ろっか、由井君?」 ………………。 おれの心臓にとどめでもさすつもりなのかな、三神さん。 見れない、後ろ見れない、絶対見れない。 「由井君」 「っ……はい」 「肩にすごく力入ってる」 「っ……ごめんなさい」 「そんなに緊張しないで?」 だっていっしょにお風呂なんて、お風呂なんて。 キス、したけど、シたこと、あるけど。 未だに慣れない、恥ずかしい、三神さんの顔、ちゃんと見れない、 ぱしゃ…… あったかいお風呂の中で体育座りになってカチンコチン状態だったおれはついつい息を止めた。 真後ろからゆっくり抱きしめられてもっとカチンコチンに張り詰めた。 「大学で」 「……はい」 「赤くなってたね」 「え……っ」 「他人のキスに興奮した?」 耳たぶのすぐそばで話しかけられて「うん」「ううん」の動作をするのも困難だ、ちょっと動けば三神さんとさらに触れ合いそうで、むり、これ以上触れ合ったら心臓に悪すぎる。 「……興奮なんか」 「どきどき、しなかった?」 「っ……別に、びっくりしただけ……それより……三神さんは? 何の話、してたの……?」 聞かないつもりだったのに緊張でてんぱって聞いちゃった……。 「うん。告白された」 「ッ」 「その場で断った」 「ッ……ッ……」 「俺には由井君がいるからね」 やだ、いやだ、そんなこと言われたら息できなくなる。 「っ……っ……三神さん……」 「うん」 「お、お腹……撫でないで、くすぐったい」 「くすぐったい? この辺?」 「っ、っ……だめ、やだ……」 「じゃあ、ココは?」 あ、あ、あ、あ。 「ほんとっ……だめ……ソコもだめっ……」 お湯の中でおれに触れてきた三神さん。 優しく撫で上げられて、背中にもっと体温が触れて、うなじにちゅってキスされて。 いやだ。 恥ずかしいのに感じる。 大好きな手に甘やかされてあっという間にみっともなく膨れていく……。 「っ、だめ、だめ……っお風呂……汚しちゃうよ……」 「汚していいから……いっていいよ?」 あ。 そんな、されたら、いきなりめちゃくちゃにされたら、おれ、むり、こわい、体も頭もどうにかなりそうで、もう。 ぶる、ぶる、ぶる、ぶる。 下半身のむずむずが最高潮に達して、お風呂の中で。 大好きな三神さんでみっともなく射精しちゃった……。

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