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おはよう平凡先生/平凡先生総受け
新米教師の鈴鳴 すずなり直人 (24/168)は困り果てていた。
「「「おはようございます、鈴鳴先生!」」」
都心に設立された女子禁制私立男子高校。
爽やかなブルーのブレザーに真っ白なシャツ、ストライプ柄のネクタイ、チャコールグレーのスラックス、そんな制服を難なく着こなす生徒達は。
何故かやたら美形男子ばかり。
きらきら輝いている、晴れの日は尚更、曇りだろうと雨だろうと無駄に眩しい。
国語科教師の鈴鳴は一年生を担当している。
さて、どこからどう見ても平々凡々な見た目、強いて言うなら童顔だというのが唯一の外見的特徴。
性格は控え目うじうじマイナス思考。
運動苦手なインドア派。
そんな平凡教師に毛先を遊ばせたサラサラヘアを靡かせて駆け寄ってきたのは一年生だった。
「今日こそお昼一緒に食べましょう!」
「美味しいメロンパンあるよ」
「先生が好きなメンチコロッケ作ってきました」
それぞれクラスが違う、そのクラスを代表するきらきら美形男子sに集られて、鈴鳴はおどおどおろおろおどおど。
え、なんでこの子達、毎朝毎朝校門でおれのこと待ち構えてるんだろ。
イヤガラセ?
これって地味新米教師へのイヤガラセ?
だって、そうとしか思えない。
少女漫画から飛び出してきたみたいな花盛りな君達による、青年誌の隅っこで顔半分見切れてる通行人みたいなおれへのイヤガラセなんだよね? ね? ね?
でも、うん、生徒からのイヤガラセにはまだ何とか耐えられる。
問題は、そう、職員室にある。
「「「おはようございます、鈴鳴先生」」」
「もう体育館だと間違えて用具倉庫には行っていませんか? 迷ったらすぐにメールで僕に報告してくださいね?」
朝礼のため保健室から職員室に上がってきた保健医の有九賀紀里生 (27/178)。
長い髪を組紐で優雅に一つに縛り、染み一つない白衣の裾を翻し、しつこくない甘さ備えたスィートな微笑みを鈴鳴に惜しみなく捧げてくる。
「いや、何かあったら同じ国語科のこの私に知らせるといい。遠慮はいらないよ」
隣デスクで長い足を悠然と組んで頬杖を突いていた古典担当の冬堂雅臣 (34/180)。
男女問わず多くの人間を魅了する艶めくバリトンボイスをやたら鈴鳴の耳元で奏で、だだ漏れ状態な大人の色気を突きつけてくる。
「疲れたり、ストレスを感じたら、音楽室に来てほしいな。鈴鳴先生のために心安らぐピアノソナタ弾いてあげる」
数多くのクラシックを記憶する五指をマグカップに添わせて朝日降り注ぐ窓辺に佇んでいた佐々蒼詩朗 (29/177)。
滑らかなパールの肌にぽつんと浮かぶ泣き黒子がどこか官能的な雰囲気を高め、印象付けられた切れ長な双眸から濡れたような視線を紡いでくる。
そう、この高校は生徒どころか教師までもが美形揃いときていた。
官能文庫から飛び出してきたようなしなやか大人美形sに至近距離で囲まれて鈴鳴は困り果てる他なかった……。
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