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こっち向いてカシャッ-2

混雑した昼休みの食堂、すでに受け取ったトレイを持って空席を探していたら。 長テーブルの端っこで羽海野と向かい合って昼食をとっている逢坂を環は見つけた。 「ここ空いてる?」 「あーっっ弘瀬君だ!」 確認してきた環の背後にいた弘瀬に羽海野は目を輝かせ、逢坂は顔も見ずに「空いてる」と一言返事を。 「羽海野、何食べてるの? それB定?」 「うんっ! 弘瀬君はA定?」 「うん、俺、A定」 「逢坂は、それ、から揚げ定食?」 隣に座った環に問われて逢坂はやはり顔も見ずに答える。 「オカズがから揚げのみでハンバーグ定食のわけがない」 パックの牛乳に大盛りチャーハンという組み合わせの環は。 ぶっきらぼうと言っても過言ではない逢坂の受け答えにちょっと笑った。 「逢坂って面白いな」 騒々しい食堂の隅っこ、向かい側で弘瀬と羽海野がきゃっきゃしている中、いつもと同じトーンで逢坂に話しかけた。 「ずっと写真部? 中学から?」 「うん」 「から揚げ一つもらっていい?」 「嫌だ」 「へー。おーさかも写真部なの? 羽海野といっしょなんだ」 「……」 「うん! 逢坂には色々教えてもらってんだぁ」 人見知り逢坂の代わりに羽海野が答え、別に気にするでもなく弘瀬は「あーいうカメラ持ってるの、なんかかっこいいよねー」とお気楽に話している。 あれ。 俺には割とちゃんと答えてくれてないか? 「半分でもいーよ?」 「嫌だ」 ぶっきらぼうだけど、ほら。 人いきれで蒸した食堂で薄手のカーディガンを羽織り、手首にはシンプルな黒のデジタルウォッチ、ちゃんとした箸遣いで無表情でから揚げを頬張る眼鏡の逢坂。 逢坂、どんな気持ちであの写真撮ったんだろう。 「そんなに見てもやらない」 「あ、ごめん」 「チーム一緒に組もー、羽海野」 「うんっ! 弘瀬君と一緒だと勝てそ!」 体育でバレーボールのチームを組む際、弘瀬に誘われた羽海野がホイホイ受け入れ、羽海野と一緒にいた逢坂は熱血体育会系メンバーと同じチームに入ることに。 「逢坂、暑くないの?」 もちろんその中には環もいた。 周りが半袖でいるのに対して一人だけ長袖ジャージを着用した逢坂、ポケットに両手まで突っ込んでいた。 「冷え症だから」 「へぇ。OLみたい」 「え? 誰がOLみたいなの?」 「あ、弘瀬。逢坂がOLみたいだなって」 「え……? おーさかのどこにOL要素があんの……? てかおーさか、それ暑くない?」 「……」 キラキラ系イケメンやらヤル気満々に声を掛け合う運動部クラスメートに逢坂の人見知りセンサーが大いに発動した。 いつにもまして猫背になると172センチの環の背後にのろのろ隠れた。 「ボール一つにどうしてあんな熱中できるんだろう」 背後で呟く逢坂に環は前を見たまま話しかける。 「俺も体育好きだよ」 「環はうるさくない」 「こらーっとれよ羽海野ぉ!」 「ひーんっごめんっ!!」 羽海野が早速しばかれている。 「ほら! 次おーさかの番!」 「……」 「あ、じゃあ俺が代わりに」 「環っ、お前逢坂のオカンかっ!」 「弘瀬君、俺、ヘタでごめん……」 「いいって、羽海野?」 掃除時間、他人と顔を合わせずに済む校庭側の窓拭きばかりしている背伸び逢坂にゴミ捨てから戻ってきたばかりの環は尋ねてみた。 「逢坂って身長いくつ? 174くらい?」 「175」 「俺より高いんだ、気づかなかった」 「猫背だから」

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