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こっち向いてカシャッ-5
高一でクラスメートだった逢坂と環は二年になって別々のクラスになった。
正直、環は小中高これまでのクラス替えにおいて一番落ち込んだ。
教室で最も人見知りだった逢坂とほぼ一年かけて関係を育み、やっと親しくなったかと思えば離れ離れになって、かなりブルーになった。
隣の教室ならまだしもフロアすら違う。
何気にバタバタな休み時間の十分間に気軽に覗くのも叶わない。
「環、飯いこー」
「俺先に行って席とってるね!」
同じ水泳部でキラキラ系イケメンエースの弘瀬や、逢坂と同じ写真部である羽海野とは同じクラスになった。
『あのな、環、実は俺と羽海野、付き合ってマス』
『……知ってる』
『え?』
『えぇぇえっ! な、なんで知ってるの……?』
『……写真部の部室で、見たっていうか、聞いたっていうか』
これまでの人生かつてないアンニュイな春を迎えたはずが。
環はさらにアンニュイな気分を知ることになる。
「あ、逢坂」
混雑する昼休みの食堂、環は大盛りチャーハン定食のトレイを片手にきょろきょろと周囲を見渡していた。
お目当ての元クラスメートを見つけて、席取りしていた羽海野のことはころっと忘れ、眼鏡に猫背な彼の元へ歩み寄ろうとして。
不意に環は立ち止まった。
我が目を疑った。
長テーブルの端っこについてから揚げ定食を食べている生徒は逢坂に間違いなかったのだが。
逢坂、金髪のコとごはん食べてる。
すごい金髪だ。
茶髪じゃない、ガチの金髪だ。
それに、あれ、ピアス何個だろう、両耳合わせて……五つだ、五カ所も穴開けてるんだ。
「逢坂」
声をかければ逢坂はチラ、と視線を寄越し、環だと確認すると半開きだった双眸をちゃんと全開にした。
「環」
あ、ほんと、逢坂だ。
終業式以来だからすごく懐かしい。
逢坂、携帯持ってなくて、メールのやりとりもできなかったから。
「元気してた?」
向かい側で調理パンを食べている金髪の男子生徒は全く反応ナシ、環は特に気にせず、逢坂は浅く頷いた。
「うん」
「ここ座ってもいい?」
てっきりOKしてもらえると思い、空いていた逢坂の隣のスペースにトレイを置きかけていた環に、その一声は届いた。
「悪い、駄目だ、環」
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