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神父様に捧げるセレナーデ-2

「よかった、これで村に平和が戻った……!」 「ぐっすり眠れる!」 「もうお外で遊んでいいよね!?」 「ああっ、眞弓……っ何もかも貴方のおかげよっ、私、本当は……小さい頃から貴方のお嫁さんになりたいって……あらっ? 眞弓……?」 これまで自分達を恐怖に陥れていた魔物が討たれて歓喜した村人達は広場で宴を催した。 多くの住人が珍しく酒に酔い痴れ、舞い戻ってきた安らぎを祝って幾度となく乾杯する中で。 一人だけ早々と退席した村人がいた。 神父だ。 生贄にされかかっていた娘だけがキョロキョロ、他の村人達は不慣れな深酒にどれも赤ら顔、こどもらは母親の膝でうつらうつら。 虫達は鳴くのを止めて静まり返って。 静寂に浸された村外れの教会。 「本当に……いいのでしょうか」 教会に寄り添うように建てられた丸太小屋。 「何がだ」 暖炉の火は消されていて肌寒い。 アンバランスなテーブルの上、普段は綺麗に片づけられているはずが、葡萄酒の空き瓶がゴロリと転がっていた。 「こんな……粗末なもので……何だか申し訳なくて」 立てかけられた梯子。 三角屋根と天井の間に出来上がった空間へと続いている。 仄かに明るい。 甘ったるい匂いもしている。 「十分だ、神父」 ランプの優しい明かりに照らされた二人。 「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「……足を開くのですか?」 「股開かねぇと始められねぇだろうが」 「そ、そうですね……その通りです」 ストイックな神父服を脱ぎ捨てて長袖シャツ一枚となった神父。 先程からずっと俯きがちだ、何故ならば。 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 目の前には全ての服を脱ぎ捨てた全裸の旅人がいた。 引き締まった、無駄のない、細身の筋肉質。 厚い胸板に申し分なく割れた腹筋、硬質な肌。 そして……熟し切った昂ぶりがすでに頭を擡げているものだから。 「こう……でしょうか」 股など一度も開いたことがない眞弓は、紅潮した顔を照れ隠しに前髪でサラリと覆い、ぎこちなく開脚した。 「おい」 「は……はい、何でしょう?」 「手」 下着を脱ぐよう言われていた眞弓は恥ずかしさに耐えきれずに片手でそっと隠していた。 「邪魔だ」 「……」 「手酷く扱われるのが好みか?」 「っ……」 まさかこんなことになるなんて。 堂々と見栄えよき裸身を曝す旅人、世羅(せら)を眞弓は上目遣いにチラリと見上げた。 魔物狩りの報酬は私自身、そう聞いて、私は……てっきり力仕事でも任せられるのかと思っていた。 何せ蓄えも金品も持たない貧困神父の身。 だから即座に、皆が嫌がる事だろうと何でもすると、喜んで受け入れた。 ……これも力仕事の一種になるのだろうか? 冷ややかな炎じみたアイスブルーの双眸から顔を背け、眞弓は、左右に開かせた両足の狭間に差し込んでいた手を恐る恐る遠ざけた。 「どうぞ……お好きなように、世羅……」

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