「アイ、それ何」 「俺の大きいみたいだから買ってみた、ローション」 一見してハンドクリームみたいなチューブタイプのローションを手にした藍川に狛野は目を見張らせた。 まー確かに……アイのは大きい。 挿入を試みて、俺のが出血して、それでアイが萎えて。 これまで三回中断した。 そんなえろいモン買うなよ、そう言いそうになった狛野だが。 痛みを軽くするため、傷つけないため、藍川のそんな気遣いをくみ取って、ぐっと口を噤んだ。 「でも、ベッド、汚れるんじゃ」 「汚してもいいよ？　洗えばいいし」 机の引き出しからローションを取り出して狛野の隣に戻ってきた藍川。 うつむきがちな狛野を真横から覗き込んできた。 「かわいい、コマくん」 「ぬ、ぬるぬるしてる……ッ」 「指三本。すぐ挿入ったね、コマくん」 「ちょ……っ待ッ、いきなし、こんな奥……ッ」 「ローションすごいね」 制服ズボンとぱんつを脱がされた狛野。 お尻に藍川の綺麗な指が……根元まで挿入ってきた。 鼓膜にこびりつくような粘っこい音色。 両足を全開にするという不慣れな姿勢、お尻の穴をぬるぬる拡げられて、ぬるぬる奥をくすぐられて。 「今日、コマくんの勃ったまま」 指姦でも痛みで萎れることがあった狛野の童貞くんが勃ちっぱなしでいるのに藍川はとても嬉しそうだった。 「ローションきもちいい？」 「わ、わかんな……ッ」 うそ、きもちいい。 でも恥ずかしくてそんなん言えない。 素直にきもちいいと言ってほしかった藍川は一瞬しょ気たが、気を取り直して。 次は自分にローションを馴染ませることにした。 「もうこんな勃っちゃった」 制服ズボンとボクサーパンツが蔑ろにされて現れた……その長身に見合った溌剌くん。 狛野と同じ童貞とは思えない。 ジェルローションを搾り出した掌で藍川はそんな溌剌くんを緩々としごく。 「あ、きもちいい……なんかあったかい」 ぬちゅぬちゅと音を立てて手コキする、とろん顔の藍川に、狛野はごっくん唾を飲む。 「コマくんもしごいて」 手をとられてぬるぬるな溌剌くんをシコシコさせられると、頭の芯が火照って、ぼんやりしてきた。 「あー……いい……このままいっちゃいたい」 「……いけば？」 「うーん……でも……やっぱり……」 早くコマくんとひとつになりたい。 ローションでふんだんにぬるつく先っぽが同じくぬるぬるなお尻の穴に。 ぷちゅぅっとキスしてきた。 「挿入りそう」 「わっ、わぁ……っ」 「あ、あ、あ……ぬるぬるしてて……コマくんに挿入っちゃう」 窮屈でぬるぬるなお尻の締めつけ感に藍川はぶわりと発汗した。 途方もない質量が体奥に迫りくる。 狛野はつい藍川の肩にシャツ越しに爪を立てた。 「あ、う、あ、あ」 「コマくん、痛い？　一回抜く？」 ぶるぶる震えながら薄目がちに狛野は藍川を見つめた。 とろ顔全開の藍川と目が合うと、ぼろっと、涙が。 「ぬ、抜かないでいい……ッ」 「コマくん」 「このまま、で……いい」 溌剌くんを出し入れされる。 狛野は涙ぼろぼろが止まらない。 やっぱり痛い、でも藍川をやっと受け入れることができて、嬉しくて、少し怖くて。 全力で藍川に縋った。 「う、ぁ……ッぁぅ……ッ」 あまりの締めつけに藍川も痛みを感じていた、それを上回る快感につい虜になって我を忘れそうになったけれど。 「アイ……アイぃ……ッ」 狛野に呼号されて、思いとどまって、このひと時をいっしょに分かち合おうと。 「コマくん……コマくん……」 藍川も何度も狛野を呼んだ。 手を握り合って、キスして、互いを感じ合った。 リズムの掴めないぎこちないピストンが全身を発熱させる。 重なった胸と胸があたたかくて安心する。 「……もう……」 藍川のその言葉に狛野はかろうじて頷いた。 「いっしょ……いける？」 「ん……ッたぶん……」 「コマくん、いっしょ、いこ？」 「ッ……あっふぁ、ぁッ」 ぎこちなく突かれながら掌で追い上げられて、狛野は、やっぱりぎゅっと目を閉じてしまう。 初めての本番で絶頂に達する狛野を見つめていたかった藍川だが、いつも以上の昂揚感に呑まれ、自分もつい目を瞑って。 初めてのひと時に心も体もぐずぐずに溶け合った。 「痛くない？　歩いて帰れそう？　タクシー呼ぶ？」 「ばか……すぐそこだぞ……大丈夫だって」 「泊まってく？」 ベッドにごろんと横になった狛野は窓の外に視線をやった。 まだ明るい。 長く感じられたひと時は実は一時間にも満たなかった。 「おばちゃん……聞こえてないかな」 「大丈夫、今覗いてきた、ぐーぐー寝てた」 狛野のすっぽんぽんだった下半身に制服を着せた、制服のままの藍川は、床に跪いていた。 力なく横たわる狛野の髪を丁寧に丁寧に梳いている。 「……なぁ、あれとってくれる」 狛野が指差した先を見、藍川はちょっと目を見張らせ、一端立ち上がった。 勉強机の端っこに置いていた一輪の花をとって、また跪いて、狛野に握らせる。 狛野は可愛らしいちっちゃな花を藍川の髪に挿した。 「お前のが似合うよ、アイ」 ちっちゃな花を頭に乗っけられた藍川は無邪気に微笑んで狛野にキスした。 「泊まってく？」 「……明日、学校」 「じゃあ俺がコマくんち泊まっていい？」 アイはどうしてこんななっちゃったんだろう。 俺もどうしてこんなにアイのこと好きになったんだろう。 end