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いっちょん好かんと-4

弾けるような心臓の鼓動に張り詰めた体。 金縛りじみた緊張感漲る珠那に背中から巻きついた筋張った両腕。 「きつか、ソファ」 「ッ……?」 「狭かけん。こっちで寝かせて」 いきなり寝室にノックもなしに入ってきたかと思えばベッドに潜り込んできた浩哉。 しかもこどもみたいに背中に抱きついてきた。 しかし華奢な珠那を閉じ込めた両腕は成人男性にも劣らない逞しさに漲っていた。 「ッ、ッ、まさかホームシック……? 君のママやお兄さんの代わりにされても困るんだけど……」 どうしよう、なにこれ、どうすればいいの、困る。 兄さんのバカ。 ぜんぶ兄さんのせいだ、バカ、怖い、すごく怖い。 心臓が破裂しそうで怖い。 「う……ッ」 零時前、寝室を浸す薄闇の中に微かに響いた嗚咽。 浩哉は目を瞬かせた。 短い黒髪をしんなりさせ、冷水を浴びてより締まった肌身。 行き場のない熱を逃がそうとして失敗に終わって青臭い下心に素直に寝室を訪れていた彼は問いかけた。 「怖かと?」 問われた珠那は珍しく素直に頷いた。 「ごめん」 「ッ」 「男なのに。キレイかけん、珠那クン」 あ。 俺の名前。 呼んでくれた。 「なんか。ずっとどきどきしとっと」 怖いと言う相手により力を込めて浩哉は抱きついた。 ……え? これって? ……浩哉クン、勃ってる? 触り心地のいい肌布団の中で自分に抱きつく浩哉の勃起に気が付いた珠那は成す術もなく緊張の余り涙を零した。 「は、離れて」 懸命に声を絞り出す。 これ以上抱擁が続いたら心臓が壊れると、何とか彼を拒もうとした。 「俺がソファで寝るから……君はここで寝ていいから、早く離れ、ッ」 視界がぐるりと回転したかと思えば。 すぐ目の前に浩哉の顔が。 捲れ上がって音もなくフロアへ滑り落ちた肌布団。 「な、に」 助けて、死んじゃう、こんなの知らない、怖い。 「君、どういうつもり、初対面の相手に、しかも同性に、こんなこと」 初対面の君に押し倒されて沸騰しそうなくらい体が熱くなるなんて意味がわからない。 「さわって」 珠那は未完成な魅力滴る双眸を見開かせた。 手首を掴まれたかと思えば着替えたばかりの彼の服越しに勃起の感触を思い知らされて、カッと、否応なしに全身の発熱が増した。 「や、やめ……」 頑なに自分から視線を逸らす、微かに震えている、ぽろぽろと涙している珠那に。 浩哉は益々発情した。 女子じみた白い柔な手をもっとぎゅっと掴むと自ら押しつけた。 「あ」 「服、脱がしてもよか?」 「え」 体格も体力も劣る珠那は浩哉に抗えなかった。 しかし、むしろ屈しているのは体よりも心の方で。 胸の奥底で浩哉の好きにしてほしいという願望が宿りつつあった。 下のルームウェアだけ脱がされる。 どうしていいかわからずに強張っている彼の両足を揃えて持ち上げた浩哉は。 年齢不相応な非童貞なるペニスを取り出した。 ミルク色の太腿狭間にぬるりと滑り込ませるなり、照れも恥じらいもせずに腰を振ってきた。 「はあ……ッ」 喉奥から洩れる雄っぽい唸り声、太腿を行き来する熱い硬い性器。 体底がジンジンしてきた。 時に勢い余って珠那自身の股間にも擦れ、ビックン、不埒な刺激に反応してしまう。 「今、感じたと?」 「ッ……も、やめ……こんなこと、もう嫌だ……」 「待って、後ちょっと」 虚空に縫いつけていた視線をぎこちなく向ければ、日中はキャップで隠れがちだった目許が露になっていて、険しげに寄せられた眉間が窺えた。 雄っぽい表情を目の当たりにして猛烈なジンジン度が下半身に隈なく広がる。 思わず自分も妙な声を洩らしてしまう。 「ン……ッッ」 ゾクゾク身震いする、また顔を思いきり反らして耐えている珠那の姿に今度は浩哉が中てられた。 「ッ……でる……ッ」 「あ……ッ」 すごい、こんな、いっぱい。 浩哉クンので、太腿も、ぱんつも……ビチャビチャ……。 どうしよう。 俺のも……硬くなっちゃった……。 「はあッ……まだ……熱か」 「君の、ソレ……」 もう何も考えられない。 熱くて、熱くて、ぜんぶがとける。 「先っちょだけなら……別に……いい」 珠那は白濁が飛び散ったボクサーパンツを白い手でぎこちなくなぞりながら薄目がちに浩哉を見つめた。 「……俺のお尻に君の……いれて……?」 「あっ……あっ……あっ……」 どうしよう。 初めてなのに、それに先っちょどころじゃない、ぜんぶはいっちゃってるのに。 きもちいい。 浩哉クンの熱いの……お尻の穴、行ったり来たりする度に、キュッて……なる。 「はぁッ……浩哉、クン……ッ」 指通りのいいハニー色の髪をさらさら乱し、綺麗に整った顔立ちを切なそうに歪め、上擦った声で喘ぐ珠那に。 ペニスを締めつける、兄のベッドで純潔を散らした彼の蕾に。 運動部エースの浩哉は我を忘れた。 これまでに一度も及んだことのない年齢不相応なピストンを無意識に繰り広げた。 「あンっっっ」 珠那は仰け反った。 大人顔負けの律動に至った彼の真下で、捲れたTシャツだけ身に着けた姿で色っぽく身を捩じらせた。 「や……ぁ、浩哉クンッ……はげしッ……」 「ごめん。止まらん」 「こんなの……しんじゃぅ……初めてなのに、おれ……ずっと感じて……」 「……かわいか、珠那クン」 「ん……っむ……」 溢れる唾液でいつにもまして艶めく唇に浩哉はキスした。 思春期どっぷりな舌同士がたどたどしく絡まり合う。 互いの微熱に瞬く間に夢中になる……。 「後ろからも……ッ感じちゃ……ッ奥、いっぱい当たって……っ」 「はあッ……はあッ……はあッ」 バックでされて奥までペニスが刺さる。 シーツをぎゅっと握り締め、珠那は、溺れた。 お尻の穴をいっぱいいっぱい拡げられて、何度も何度も突き上げられて、喉が嗄れるまで喘いだ。 「珠那クンのココ、俺ので溢れとる」 「や、だ……見ちゃだめ……」 「やらしか」 「あ、あ、あ……奥ばっかり……ソコ、だめ……」 「おいのこと……好きになって、珠那クン」 中学三年生の浩哉に溺愛されながら告白された珠那は答えた。 「会ったときから、君のこと……好き……」 「おいも。好き」 「あ……っ浩哉、く……ッッ」 「すごい。珠那クンの、びちょびちょ……いっしょ、イク?」 「ッ……ン……君といっしょ、イク……」 出会ったばかりですっかりめろめろになった弟同士なのだった。

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