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女体化した幼馴染みがすぐ元に戻ったけど意外と平気だった。-7
最寄りの駅から自宅へ帰る途中、どしゃ降りの夕立に見舞われた。
「うげ! 最悪っ」
「つべこべ抜かしていないで走るぞ、瞬」
傘を持っていなかった二人は一瞬にして水溜りのできあがった住宅街の道路を走り抜ける。
十分足らずの道程でずぶ濡れになるほどの雨だった。
とりあえず皆本宅よりも手前にある甲原宅の軒先に駆け込み、瞬は、情けない声を上げた。
「あ~あぁ……びちょびちょだ」
びちょびちょ。
和希の変態センターが何気ない瞬の台詞に反応した。
「全身濡れまくりだよ、気持ち悪ぃ」
濡れまくり。
つい鍵を取り出すのを忘れて聞き入ってしまう。
そんな和希に気がついた瞬はぷんすか怒った。
「おい、和希! 早くドア開けろよ、寒ぃってば!」
和希はすぐ横に立つ瞬を見下ろした。
咲き誇る紫陽花たちを背景にし、全身濡れまくってびちょびちょの瞬。
前髪の先から滴る雨の雫に双眸をぱちぱちさせている。
濡れそぼつシャツは肌にぴったりと張りついて体の線を露にし、華奢な体つきを際立たせていた。
胸の辺りには否応なしに視線を引きつける二つの色彩が。
「和希、お前、どこ見てんだ?」
喧しい雨音に負けじと瞬は大声で問う。
和希は答えずに、鍵を取り出し、引き戸を開錠した。
瞬は冷えた体を両腕で大袈裟に擦りながら住人より先に甲原宅へお邪魔した。
「うう~寒ぃよ~和希ぃ~なんかあったかいモンくれ」
瞬が靴を脱ぐのに苦心している間、戸を閉め、鍵をかけた和希。
微塵の躊躇なく玄関床に鞄を落とすと、華奢な瞬を。
背後からがばりと抱きしめた。
「わぁぁぁ!?」
「瞬、お前はなんてえろいんだ、このえろ神め」
「はぁ!? ちょ、いきなり何して……、ひゃあっ」
二つの乳首をシャツ越しに摘ままれて瞬はつい甘い声を上げた。
ぷにぷにした突起を指の腹で弄られて、下肢に直結する刺激に途端に足腰ががくがくする。
華奢な自分を簡単に包み込む和希の両腕の中で前屈みになると、胸に肘を宛がい、懸命に距離をとろうとした。
「何すんだよ……っ離せ!」
「寒いんだろう? 俺のホットミルクを飲ませてやる」
「へへへ変態! はーなーせ!」
全力で暴れる瞬に和希はさらに抱きついた。
首筋に顔を埋め、高校生のくせして無駄に艶のある低音ボイスを鼓膜に吹き込む。
「嫌だ」
くにゅくにゅと、二つの乳首を捏ね繰る。
耳たぶをぱくんと口に含んでちゅうっと吸い上げる。
「や……っ」
和希の正面と重なる背中、指先や唇が触れる箇所にぞくぞくと甘い震えが走る。
まだ一度も触れられていない股間にもうっすらと反応が……。
「や……やだ、こんなとこで」
瞬の拒絶対象が行為から場所に変わった。
「お前の部屋、行こ……? 玄関はやばいって……」
ちらっと、ためらいがちに瞬は背後に立つ和希を見上げた。
ただでさえ愛らしいうるうる双眸、それが今は雨滴を含んでさらにパワーアップしている。
雨に濡らされたおかげなのか、女顔の瑞々しさにより磨きがかかっていた。
「んっ!?」
和希にキスされて瞬は目を見開かせた。
体の向きを変えられ、正面を重ね、深々と口づけられる。
骨張った器用な長い指が濡れていた髪を梳く。
不埒な舌先が上下の唇を割って大人顔負けの悪戯を仕掛けてくる。
瞬はぎゅっと和希の腕を掴んだ。
恐る恐る、舌先の悪戯に応えるように、もっと唇を開いた。
溜めていた唾液が口角から自然と溢れ出る。
「ふぁ……ぁ……ん」
ぴちゃぴちゃと口腔を鳴らされ、舌の上を動き回る舌尖に頬を紅潮させた。
和希の腕を掴む手に力が入る。
ああ、可愛すぎるぞ、瞬。
「んんんっ!?」
瞬は目を白黒させた。
和希の両手がおもいきり尻を掴んだのだ。
和希は瞬の驚きを余所に、痴漢を魅了する美尻を制服越しに掌で堪能した、堪能しまくった。
「んんぅ……っおいっ和希! やややめろってば!」
「もう少し揉ませてくれ、今日は一度も揉んでいなかったからな」
もみもみをやめない両手に瞬は身を捩じらせた。
無意識に、股間を、和希に押しつけてしまう。
火照りつつある中心をぐりぐりしてしまう。
「……お前、完全に誘っているだろう、それは」
「え……っ? あ! ち、ちが……!!」
「いいんだ、俺にはわかるぞ、瞬」
和希は美尻をぐっと掴んで抱き寄せると、互いの股間を密着させ、摩擦を強めてきた。
ぐりぐりぐりぐり、強めに刺激される。
「あ……っ」
「ほらな、気持ちいいんだろう?」
「ん……っやだ、ぁっ」
「やだ、じゃない。お願いします、和希様、もっと気持ちよくしてください、と言え」
「ううっへんたぁい……!」
うるうる双眸できっと見据えられて和希は思わず笑った。
濡れたダサ眼鏡を靴棚に置くと、高校生らしからぬ無駄に色気に富んだ一重の切れ長な眼を露にする。
「仕方ないな、じゃあ部屋に行って思う存分セックスするか」
「……露骨な言い方すんな、バカ」
「なんだ、じゃあベッドインか?」
「ださ」
瞬も和希の腕の中で笑った。
二人は一端離れて水浸しになった靴を脱ぎ、不快な足元を堪えて通路に上がる。
二階への階段はすぐ目の前だ。
玄関マットを踏み越えて先に瞬が足をかけた。
「いきなり発情しやがって、今朝の痴漢よりタチ悪ぃぞ」
「……今朝の痴漢?」
「あ、俺、またケツ触られたんだ」
「……」
「今日ってとにかく眠くて、いちいち喚くのも面倒くさくてさ、ほっといた」
「……」
「和希、全然気づかなかったんだ――……」
ぎゅっと手首を掴まれた。
まだ階段の途中であった瞬は振り返って和希を見る。
後ろにいた和希は……。
「お前、痴漢に尻を揉ませ続けたのか」
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