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You are my beast!!!!/天然自己中美男子×俺様ヤンキー
「女で大和なんて名前、変じゃね?」
黒板前で目を見張らせた転校生。
教室中央の席で踏ん反り返った小生意気そうなクソガ……男子生徒。
注意する担任を余所に周囲のクラスメートも巻き込んでチンピラさながらにさらに悪フザケをかましてくる。
「つぅか声ちっさ、お前アイツの声聞こえた? ぜんっぜん聞こえなかったよな? 蚊がプーーーーン飛んでるみてーな声じゃなかった?」
女子もクスクス笑い出す、黒板に白いチョークで「日臣大和 」と名前を書かれた転校生はどうしようかと首を傾げ、女教師は日頃ほとほと手を焼いている問題児に肩を竦めて再度注意した。
「木々津君。日臣大和君は男の子です。それから今バナナを食べるのはやめなさい」
……マヂか……。
一時間目の国語の授業中、五年生で一番の問題児・木々津唯咲 は窓際についた転校生の横顔を堂々とジロジロ眺め回していた。
あんなんが俺と同じ野郎だなんてウソだろ、ありえん、しんっ……じらんねぇ。
「ありえん」
休み時間に入り、次の授業の準備をしていた転校生・大和は大股でやってきた唯咲をおもむろに見上げた。
色白、黒目がちな双眸、サラっサラな髪。
女子めいた繊細な顔立ち。
肌が白い分、唇の色味が際立って見える。
「やっぱ女じゃねーか」
問題児ながらも統率力を備え、体育の成績のみ毎回花丸、一緒にいて盛り上がる唯咲の背後に友達がわらわらやってきた。
クソガキじみた性格ながらも外見は悪くなく、各グループ毎におしゃべりしていた女子も興味津々に視線を向ける。
「女じゃないよ」
「声ちっさ!」
「でも聞こえてるでしょう?」
なんだコイツ。
なんかむかつくわ。
「ごめんね、先生に用事があるから職員室に行ってくる」
冷静で落ち着いた物腰を見せつけられて唯咲の苛立ちは加速した。
目の前で悠然と席を立ち、その場を離れようとした大和へ手を伸ばして……。
「男だって証拠見せろッッッ!!」
「木々津君。貴方はどうして休み時間の教室で日臣君のズボンと下着を脱がしたの」
二時間目の算数が終わるなり唯咲は職員室に呼び出された。
「先生、僕そんなに気にしてません。ただ見てしまった女子の人達には悪いことしたかなって」
ふてぶてしいツラで説教を聞き流していた唯咲に付き添っていた大和にはちゃんとアレがツイていた。
「ごめんね、木々津くん」
職員室を出、教室に戻る途中、階段の踊り場で立ち止まった唯咲は隣をついてきていた大和を三白眼でジロリと睨んだ。
「木々津くんとかうぜぇ、んな呼び方やめろ」
「じゃあ何て呼んだらいいの」
なんでチンチンあんだよ。
こんな……こんな……かわいーのによ。
「唯咲。みんなそう呼んでっから」
一目惚れなる淡い初恋を抱いたこと、そして呆気なく破れたことにも自分自身気づいていない唯咲。
教室で下半身を曝されたというのに特に動揺するでもない、怒るでも恥ずかしがるでもない、透明感溢れる繊細な見た目と反対に小学生にして骨太精神を持っている大和。
「唯咲くん。これからよろしくね」
瑞々しい果実じみた唇で名前を呼ばれて妙なくすぐったさを覚えた唯咲は心に決めた。
女みてーで弱っちぃ大和のこと、俺が守ってやんねーとな。
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