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いつか君をわがまま王子様/眼鏡先生×美ショタ

山深いど田舎の小学校で教師をしている興津邦治(おきつくにはる)(27)は最近悩んでいた。 転校生の三国十碧(みくにとあ)がまるでクラスに馴染もうとしないのだ。 都会からこんなど田舎へ、ある意味カルチャーショックもあるだろう、コンクリートの壁が山々へ、コンビニは町にたった一つ、しかも不定休ときている、都会育ちには衝撃の事実に違いない。 「おきっちゃん、だめ、話しかけても反応ナシ、です」 「もう放置でいーんじゃね?」 放課後、クラス委員であるしっかり者二人の報告を受け、職員室にいた邦治は「うーん」と黒縁眼鏡をかけ直して眉間を押さえた。 放置という言い方はアレだけど、あまりこちらから干渉し過ぎるのも確かに逆効果かもしれない。 ここは一端引いて様子を窺ってみるか。 何でも十碧は読者モデルをやっていたらしい。 平均を上回る身長、しかしスレンダー体型でシュッとしている。 サラサラの髪は染めているのが一目瞭然なホワイトアッシュ。 視力低下を心配してしまう、片目にかかる長い前髪。 そして両耳にピアス。 毎日違う服。 やたらステッカーがはられたランドセル。 休み時間はいつも耳にイヤホン、ウォークマンで音楽を聴いている四月の転校生。 そんな彼を見に別クラスの女子や上級生までもが5年2組を訪れる日々にあった。 転校生の十碧だけが我関せず、浮き足立つ周囲と距離をとり、完全に壁をつくっている。 邦治が声をかけても然り。 ツンとしていて近寄りがたいイメージがあるのも否定できない。 そんな矢先にちょっとした事件が起こった。 「先生ッ」 「十碧くんが……」 調理実習のときだった。 十碧が熱湯で火傷してしまったのだ。 同じ班の生徒らが騒ぎ、片手に熱湯を浴びた十碧自身は悲鳴一つ上げず、その場に蹲っていた。 彼を抱き起こした邦治はすぐに水道水で赤くなった場所を冷やした。 「十碧、大丈夫? 痛む?」 「……」 「うん、これくらいならきっと痕にならない。一先ず十分冷やして、それから保健室に行こう」 火傷は大事に至らず、事情を説明するため訪問してみれば彼の祖父母はわざわざご足労をと恐縮し、さらに恐縮した邦治なわけで。 そんな出来事を境にして訪れた変化。 「……」 「ん?」 休み時間や掃除中、ふと気配を覚えて視線を向ければ、邦治のそばにはいつも十碧が無言で立っていた。 「手の方、痛みはどう?」 イヤホンをしたままの彼に問いかけ、邦治は包帯を巻く必要もなかった、軟膏を塗ってガーゼが張りつけられた片手をゆっくりとってみた。 「ごめん。先生がもっと注意してればよかったんだけど」 「……ううん」 邦治は耳を疑った。 聞き間違いかと思った、他の生徒が発した声かと辺りを見回した。 「……せんせい、の、せい、じゃない……です」 喋った。 火傷をおった時ですら声を上げなかった十碧が、しゃ、喋った……!! 「う」 「え、おきっちゃん、泣いてるの?」 「また動物番組思い出して泣いてんのか?」 目頭を押さえた邦治の元へわっと集まってきた生徒ら。 逆に十碧はそっと身を引いた。 木造の床をギシギシ鳴らし、席に着き、窓から広がるお気に入りの景色に視線を委ねた……。

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