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デレテルの?ヤンデルの?どっちが好きなの?/ヤンデレイケメン×ヤンデレ眼鏡
十七歳でクラスメート同士の青山桐 と睦見永都 は付き合っている。
「永都、シャーペンの芯くれる?」
「今持ってるの、2Bだけど」
「え、俺、HB派なんだけど。まぁいーや」
もちろん家族にもクラスメートにも誰にもナイショの仲だ。
放課後、宿題を二日間連続して忘れて今日中に絶対に提出するよう教師に命じられ、永都の机で二日分の数学プリントを解いている桐。
眼鏡を拭く永都は言葉少なめに付き添っている。
そんな二人の元に一人の女子生徒がぽよんぽよん走り寄ってきた。
「むっくん、私にも勉強教えてっ」
怜悧な顔立ちに眼鏡がよく似合う永都は見た目通り成績優秀な生徒だ。
ぽよんぽよんをむぎゅっと押しつけるようにして永都の腕にしがみついてきた彼女に、桐は、もらったばかりのシャーペンの芯をプリント上でブツ……ッと無駄にした。
おいおいおいおい、おーーーい?
ばかみたいに無駄な脂肪、永都に押しつけないでくれるかなー?
いろんな手垢ついてるからばっちぃの確実だよね?
制服でガードされてるとは言え永都が可哀想でしょ?
ビッチ女、マジうざいんですけど?
「きゃっ?」
永都にべたべたしていた女子生徒の腕を鷲掴みにした桐は自分の方へ力任せに引き寄せた。
「ちょっとー痛いよー」
「永都にバカがうつっちゃうから。あんま近づかないで?」
「ひどーい」
「ねー、何食べたらこんな育つの? 毎日乳製品ドカ食いしてんの?」
「なにそれー」
流行色に髪を染め、それなりに似合っている、それなりにイケメンな桐にがしっと肩に腕を回されて女子生徒は満更でもなさそうに笑っている。
「むっくん、ねーねー、世界史のノート見せて?」
ビッチ女、マジ低脳、また永都に触ろうとしてやがる、俺がさっき言ったこと覚えてないの?もう忘れちゃった?
交尾好きの発情女、手に負えません、誰か首輪とリード持ってきてください。
「だからバカがうつんだって」
「わっ、待って待って、ぱんつ見えちゃうっ」
永都に近づけまいと桐は女子生徒を片膝に抱っこした。
「お願いだからじっとしてて、お願い」
「えー?」
落ち着いたダークブラウンの髪色である永都は、明らかに浮かれている女子生徒を抱っこして数学プリントを解く桐を何ら感情の揺らぎもなさそうな眼差しで見つめていた。
「ハイ、終了」
「すご、はやーい」
「え? 二十分もかかっちゃったよ? お前がうざいから?」
「うざくないよー」
「帰ろ、永都」
女子生徒をポイして、緩んでいたネクタイをきちんと締め、職員室に宿題を提出しに行けば「やればできる」とか何とか言われて「はぁ、スミマセン」と籠もった空気が鬱陶しくてテキトーに謝って。
またネクタイを緩め、玄関でローファーに履き替えて、外へ出た。
グランドでは運動部が練習に励んでいた。
冷たい風が頬に当たる。
校内の明るさに馴染んでいた眼球に夕焼けが凍みるみたいだった。
「永都」
「なに」
「手、繋ぎたい」
「まだ学校だから。後でね」
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