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雨のち幼馴染み/男前×ひねくれ平凡=幼馴染み高校生
バスを降りた途端、滝のような雨が。
「うわ、サイテー、サイアク」
新興住宅街出入り口にある停留所には屋根がなく、コンビニといった適度な雨宿りの場所も近場になく。
高校二年生の小峰真尋 はかる~いスクバを頭上に掲げ、気象現象にブチブチ文句を言う。
「走るぞ、真尋」
真尋の幼馴染みで小中高同じ学校に通っている津島弘毅 はそう言うなり、あっという間に出来上がった水溜まりを跳ねて駆け出した。
「あーー……ハイハイ」
週末に引っ越しバイトをしていて足腰が鍛えられている弘毅の後を追う真尋。
風もあり、横殴りの雨に頭どころか睫毛も濡れそぼっていく。
「コケるなよ」
振り向かず、大きな声で自分を心配した幼馴染みに「誰がコケるか」と小さな声でボソリと言い返した……。
バス停から近い津島家に真尋は一端避難することにした。
「靴下ビチャビチャ、きもちわる」
玄関先で靴下を脱いで革靴に突っ込み、裸足でお邪魔する。
弘毅の母親にお風呂に入るかと聞かれて「ありがと、おばちゃん、今風呂入ったら寝そーだから遠慮しとく」と断り、タオルだけ借りて一人二階に向かった。
小奇麗に片づけられた弘毅の部屋。
母親ではなく本人が常日頃整理整頓を心がけているという。
「つめた……」
制服のシャツがぴったり肌に張りついた、母親に週に一度は「ちゃんと掃除しろ」と叱られる有様の部屋である真尋はタオルで頭をわしわし拭いた。
やっぱお風呂入ろーかな。
でもパンツの替え、ないし、てかパンツも濡れてる、コレ。
「きもちわる」
「何が気持ち悪いんだ、虫でもいたか?」
炭酸とお菓子をトレイに乗せた弘毅がやってきた。
「この部屋、いつ来てもキレーに片づけられてて、きもちわる」
弘毅は肩を竦めただけ。
日に焼けた褐色肌、特に何か買いたいわけでもなく、月に平均的なお小遣いももらっていながら高一からバイトをしている幼馴染み。
「大学進んだとき、何か有効に使えればいいかなって。後、社会勉強も兼ねて」
どうしてバイトするのかと尋ねればそんな答えが返ってきて、ほんとこいつは昔から根っこからイイコちゃんだよ、と思ったものだ。
「服、着替えるか?」
いつの間に身長もぐいぐい伸びちゃって、今、176だっけ? 俺も後2センチ伸びれば170突入なのに。
バイト先の先輩の友達が美容師だとかで、茶髪にしちゃって、しかもそんな派手じゃなくて似合ってるし、短髪だけど雑誌に載ってるみたいに凝ったカンジだし。
……彼女いるし。
……二人目だし。
…………俺、童貞。
…………この差、一体何、幼馴染み同士でこうも違う?
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