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雨のち幼馴染み-2
「あ、真尋」
頭は拭いたが体はびしょ濡れのままベッドに飛び乗った真尋に弘毅は呆れた。
「服貸すから着替えろよ、風邪引くぞ」
そう言った直後に当人がクシャミをした。
「人に注意しといてダサ」
我が物顔でベッドにごろんと腹這いになってニヤニヤする真尋、弘毅はそんな世話のかかる幼馴染みを退かそうとする。
「この間干したばっかりなんだ」
「へー。あっそ」
「真尋」
母親も本人も真尋を優先し、タオルで顔すら拭っていない弘毅。
濡れた髪の先から滴って落ちる雨滴。
褐色の肌も濡れて真尋と同様、制服シャツがぴったり張りついている。
あ。
こいつ、また成長してる?
「お前の筋肉また育ってんの?」
自分をベッドから退かそうとしていた弘毅に真尋は触れた。
制服の白シャツとインナーが張りつく二の腕をぐっと掴んだ。
「うわ。やっぱり」
「別に……これくらい普通だろ」
「それ嫌味」
これ、運動部の奴等よりすごそ。
ちぇッ、うらやまし。
でも引っ越しバイトとかホントむり、キツ過ぎるって。
「お前将来ムキムキ大学生にでもなるつもり? ……あ」
手を振り払われて真尋は目を見張らせた。
弘毅らしからぬ乱暴な仕草だった。
「ごめん」
すぐに謝った弘毅はベッドから図々しい幼馴染みを退かすのを諦めてその場から離れようとした。のだが。
どさっ!
「この筋肉やろー、どこまで筋肉育てるつもりだ」
完全悪ノリした真尋に全力でベッドへ連れ戻された。
仰向けに倒れ込んだところを、ギシリ、真上に馬乗りになられて。
高校生二人の体重でさらに深く沈んだベッド。
「これが胸板ってやつですか」
悪ノリ真尋は濡れたシャツ越しに弘毅の胸にタッチした。
「おい、真尋」
「あ、まさかお前。腹筋割れてたりする?」
高校に入ってからは一年も現在もクラスは別々、体育の着替えでその体を見る機会がなかった真尋は。
了解もなしに上半身の服を捲り上げた。
そして目を見開かせた。
割れてる、ホントに。
なんかえろい。
三年の巨乳彼女も大喜びだろーな、こんなん。
雨に冷えてひんやりした両手で腹筋をぺたぺた触られて、弘毅は、目元を引き攣らせた。
「真尋、冷たい」
「これが俗に言うバッキバキ?」
「知らない」
「ウハウハだろーな、こんなバッキバキなら」
弘毅に馬乗りになった真尋はぺたぺたを続けながら何とはなしに口にした。
「もしかしてFパイセンのためこんな体目指したとか?」
「え?」
「確かにあの巨乳支えるには、これくらい必要かも、じゃないと潰されそ、あ、バイト代有効に使うって、もしかして同棲? Fパイセンと同棲とかヤラシ過ぎ、」
どさっ!!
一瞬、何が起こったのか真尋には理解できなかった。
気が付けば自分がベッドに仰向けに、弘毅が馬乗りになっていて。
自分より大きな両手がシャツの下に覗いた腹を撫で回してきた。
「ちょ、やめッ、つめたッ、つめたぃッ」
くすぐったくて身を捩じらせた真尋、弘毅の両手を退かそうとしたが。
ビクともしない。
極々普通のむにっとしたお腹をしつこく撫で回し続ける。
「おいッ、弘毅ッ、ぃ……ッ、それくすぐったい……!!」
……あ、あれ?
……弘毅、怒ってる?
……表情、死んでるんですけど。
「ッ、ッ」
爪の先が浅く肌に静まって、そっと引っ掻かれた。
くすぐったい感覚に何か別のものが紛れて真尋は何度も瞬きする。
「弘毅ってば」
柔らかなお腹を意味深に辿る指先。
ヘソの周りを一周したり、ふにふに抓ったり。
「ッ……おい弘毅!!」
馬乗りになった弘毅に見事に抵抗を封じられた真尋は喚いた。
外では激しい雨が降り続いている。
ひんやりした室内に雨音がざあざあ響いている。
「ちょ、」
濡れ渡ったシャツの中に強引に潜り込んだ両手が脇腹を伝って上昇する。
お腹どころかどんどん露になっていく真尋の上半身。
「なにして、」
薄っぺらな胸にぴたりとあてがわれた両手。
肌にゆっくりと食い込んでいく五指。
緩々と動いて、揉まれているとわかると、頬がカッと熱を帯びた。
「お前のはAもないな」
彼女と比べられた、まるで意味のないバカみたいな比較をされた、それが何だか悔しくて悔しくて。
「ふざけんな……ッこのバカ……ッ」
真尋はぶわりと双眸に涙を溜め込んだ。
「……真尋」
はっとして、咄嗟に顔を背けて、ビクともしない弘毅の真下で必死になって泣かないよう堪えた。
なんでキレてんの、弘毅。
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