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雨のち幼馴染み-4

夜になっても雨は降り続いた。 「……寝れない……」 深夜、ベッドに潜り込んでもう一時間は経過したというのに眠ることができず、真尋は苦しげに一人呟いた。 『ごめん、ずっと好きなんだ、真尋のこと』 脳裏に延々と思い出されるは数時間前に聞かされた幼馴染み・弘毅の言葉。 火照っていた体に絡みついてきた両腕。 いつになく重たげな声で囁かれた愛の告白……。 「……ありえない……」 絶え間ない雨音に苛立ちを募らせた真尋はまた苦しげに呟いた。 幼馴染みの突拍子もない言動諸々に対してでもあるが。 今現在、自分の体に訪れている無視できない発熱に対して、でもあった。 初めての性経験に勝手に浮かれた下半身。 放置できそうにない。 ティッシュを枕元に置いて、肌布団に包まったまま、パジャマ代わりのハーフパンツの内側へ利き手をもぞもぞ忍び込ませていく。 弘毅のせいだ。 いきなり、ずっと好きとか、あんなこと。 自己中勝手スギ。 いきなり言われても困る。 だってお前、俺の幼馴染みじゃん。 男同士だし。 ずっと一緒にいたのに……なんで今日、ほんとあんないきなり……。 ……あいつの手、でかかった。 ……俺の、すっぽり覆い隠してた。 熱くて、湿ってて、力強くて。 怖かったけど、むかついたけど……きもちよかった……。 「ふ……っ」 しかめっ面真尋は横向きになって目を瞑り、プライドや羞恥心を今は自分の都合のいいように黙殺して。 弘毅の片手を思い出しながら遣る瀬無いオナニーに集中した……。 「真尋」 その声を教室で聞いた真尋は過剰にビクリした。 次に二限目を控えた休み時間、昨日のことがあって浮つく心を持て余していたら、浮つく原因をつくった張本人が別教室からやってきた。 「今日、なんで先に行ったんだ」 いつもなら朝は一緒に登校するあるある幼馴染み同士。 昨日、あんなことがあってダッシュで逃げ帰ったくせ(俺が)、夜それネタにしておなって(俺が)、普通に一緒に登校できるわけなくない(俺が!)? 可能な限りそっぽを向いて真尋は黙秘した。 机のそばに立った弘毅は不機嫌になるでもなく。 「わっっ?」 片頬杖を突いて視線を逸らしていた真尋の片腕を掴むと立ち上がらせ、同級生が行き来する廊下へ。 「ちょ……っ」 渡り廊下を突き進んでわざわざ木造旧館へ、埃っぽい階段の踊り場まで、あっという間に幼馴染みを引っ張ってきた。 「この馬鹿力ッ、バイトフェチッ、離せッ」 まだぎゅうぎゅう自分の腕を掴んでいる弘毅に真尋が喚けば。 昨日みたいに弘毅は片手で真尋の口元を塞いだ。 ぶわりと脳裏に蘇った人生ぶっちぎりワースト1の記憶。 しかも色褪せた窓の向こうでは雨が降り頻り、連鎖して、弘毅の手つきだとか何とも言いようのない空気だとか、やたら鮮明に生々しく肌身にまで蘇ってきて……。

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