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beautiful vampire-2
かつてダリア神父は吸血鬼に家族を殺された。
そしてこの吸血鬼ロザにこの森で命を救われた。
そう、人間に害を成す吸血鬼がいれば、人目につかない静かな場所でひっそり永い時を過ごす人畜無害の吸血鬼もいる。
後者の場合、旧世代と言われる年経た者達で、血に対する欲望もある程度コントロールできる。
新世代は混血のダンピル、生まれ落ちて半世紀を超えない歴史の浅い者達で、容赦ない血への渇望を抱いており、危険だ。
「ロザ様をこの森の外へ出すわけにはいかん、ダリア神父殿」
器用に翼でおもてなしの準備をしたフリエンドがティーセットの乗ったトレイを持って奥の間にぴょんぴょん入ってきた。
「嫌な噂を耳にしたのじゃ、たちの悪いハンターどもがむやみやたらに吸血鬼狩りを行っていると」
「この森にいたら安全なのか?」
「森というより、この館にいればロザ様は安全なのじゃ」
「へぇ?」
「歓迎できぬ愚者は寄りつかぬよう、目晦ましの結界を施してあるのだ。悪辣なる人間は決してここを訪問できん、どうじゃ、すごいだろう」
「ん? じゃあほぼ毎日寄りついている俺は歓迎されてるってことか?」
「……フリエンド、べらべらクチバシで喋るな」
「お許しを、ロザ様、カァ」
数世紀も生き続けているとは思えない、それは麗しい青年の姿をしたロザは芳香漂う紅茶を味わいつつ、へらへら笑うダリアを横目で冷ややかに見据えた。
「ちょこまか動き回る虫までは対処できない、それだけだ」
「俺、虫? せめて狼とかがいいなぁ」
正に人畜無害そうなダリア神父は人の良さそうな笑顔でがぶりと紅茶を飲み干すのだった。
館に施された結界は人間に対するもの。
もしも悪辣なハンターどもがひよっこダンピルを叩きのめし、吸血鬼探索能力を持つ彼らを調教し、支配していたら?
〈さまよいの森〉の麓にある村で悪霊払いの祭りが賑やかに行われている、その夜。
吸血鬼ロザの館はダンピルを従えた吸血鬼ハンターどもに急襲された。
「これまた随分とお綺麗な吸血鬼じゃねーか」
「剥製にしたら変態貴族に売れそうだな」
「生きたまま、も、いいかもな? 邪魔なパーツはいくつか取り除いて、な」
蜘蛛の巣と埃だらけの大広間、多くの吸血鬼を屠ってきたクロスボウやメイスで狙われて追い詰められたロザ。
あくまでも争いを避け、ただ静かに独りで永遠を紡いできた吸血鬼は戦う術を持っていなかった。
そして跪いて命乞いするという決断も。
「愚かな人間ども、たとえ首から下を切り落とされようと私は屈しない」
鋭く冷たく見据えてくる気高い美しい吸血鬼。
野蛮なハンターどもは否応なしに抱かされた畏怖の念を誤魔化すように一斉に凶器を……。
「俺の宝物に何しやがる、バカども」
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