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咲いた、咲いた、恋の花-4
西日に溺れた教室。
「有崎くんのこと……好きになっちゃって……」
信じられない思いで光莉は丸山澄香の告白を聞いていた。
「最初、入学したときはなんか怖いコだなって思ってたけど……どんどん印象が変わっていって……今年も同じクラスになって、チャンス逃したくないって、そう思って……告白……してみました」
笑っているのに、今にも泣きそうな、つい両手を差し伸べたくなる様子で目の前に立っているクラスメート。
光莉は一気に渇いた喉を震わせて。
正直にぽつりと告げた。
「好きな人いるんだ」
丸山澄香が立ち去り、西日が次第に薄れても、光莉は教室から出れずに一人席に着いていた。
そこへやってきたのは。
「光莉」
「……千景」
「ごめん、先に帰って、って言われてたけど気になって」
スクバを肩から提げた千景が教室を訪れ、慌てた光莉は立ち上がると机脇に引っ掛けていたスクバを手に取った。
「さっき丸山と擦れ違った」
世界が止まったような心地で光莉は一時停止に陥る。
何の言葉も思いつかずに唇まで凍りつかせた。
「もしかして、二人、付き合うのか?」
付き合わない、付き合わないよ。
なんか、いろいろごめん、千景も、丸山澄香も。
二人のこと傷つけちゃってるのかな、俺。
「……告白されたけど、付き合わない、だってよく知らねーし、丸山のこと」
なんでだろ、泣きそ。
なんか話すのが怖い、今。
余計なこと言ってもっと傷つけたら、怖い、ごめん。
「そーいう気持ちないのに、同情で付き合ったり、行き当たりばったりでせっくすしたら、ダメなんだろ……? 前に教えてくれたもんな、千景……」
光莉は目を見張らせた。
潤んでいた双眸がさらに濡れ渡った。
「悪い、光莉」
静かな教室にため息混じりの千景の声が溶けていく。
「なんか、今。ほっとしたら、こんな」
背中から抱きしめられた光莉は急過ぎる抱擁に呼吸を忘れていた。
それなのに心臓は痛いくらい脈打っていて。
爆音じみた鼓動が体中に鳴り響くようで。
「光莉が丸山と付き合わなくてよかったって、今、思ってる」
「そ……それ、どーいう」
「お前が誰かのものにならなくてよかったって、思ってる」
どうしよう、死にそ。
俺の全部が弾けそーになってる。
「去年のあの日から、光莉と過ごすようになって、お前のこと知って……俺、お前のことが、」
「せっくす、する?」
千景はいつか聞いた言葉にゆっくり瞬きした。
光莉はすり、と愛しいクラスメートの胸に髪を擦らせて顔を上げる。
「そーいう気持ちがあるなら、付き合って……俺とセックスしたい?」
窓にぼんやり写り込むシルエット。
沈みかけた日の残像を背景にして一つになった二つの影。
「光莉とセックスしたい」
どうしよ。
俺の全部が花開きそーだ。
end
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