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おれたちバグズクラス!-6

雑木林の奥には東屋が設置されてある。 天気のいい日中には散歩に来た近所の住人がよく休憩している、しかし深夜の時間帯となると、時に恋人同士が密かに淫らな逢瀬を重ねていることもある。 今夜も例外ではなかった。 ベンチとセットに作られたテーブル、その上に座った黒揚羽と足長が我を忘れたように。 普段は冷ややかで物憂げな影を持て余す黒揚羽が、紅葉色に頬を染め、眉根を寄せ、何度も声を詰まらせて。 クラスで最も頼りにされている足長が、黒揚羽の冷えた髪を乱暴に掻き乱し、何度も角度を変えては茜色の唇を余すことなく欲していて。 窒息しそうな黒揚羽は足長の服をきつく握りしめた。 胸の奥底にずっと閉じ込めてきた想いをやっと知ってもらえて、満たされるのと同時に、飢えていく。 遠ざけていたぬくもりをひたすら切に痛感した。 「ぁ……っ、ン」 やっと息継ぎの瞬間が与えられたかと思えばすぐに呼吸を奪われる。 熱を帯びた手にびしょ濡れのパーカーを剥ぎ取られるなり、さらにきつく絡みついてきた両腕。 テーブルに押し倒されて痛いくらい手首を掴まれて。 秘密基地で、教室で、一度も見た覚えのない獰猛な眼差しを一身に浴びて。 「ンン……」 囚われることに初めて甘い眩暈を感じて、黒揚羽は、足長を掻き抱いた。 こんなにも凶暴な欲望に支配されるのは初めてだった。 自分でも驚くくらい手荒な真似に走り、謝りたいと思いながらも、その時間すら惜しく思えて。 足長はがむしゃらに黒揚羽と唇を交わしていた。 すでに滾りきった雄茎。 黒揚羽の両足の狭間に割り込んでいた足長は、ぐっと、彼に押しつけた。 押しつけてしまうともう加減できなくなる。 唇を深く交えたまま無心で卑猥な摩擦を繰り返し、限界近くまで、より滾らせる。 「ッ……!」 おもむろに黒揚羽の掌に撫で上げられて足長はぞくりと反応した。 滴りそうな色香に濡れた双眸が自分を意味深に見上げている。 言葉はいらなかった。 長いこと重ねていた体を離せば、漆黒髪の乱れたクラスメートはテーブルを降り、その場に跪いて。 下肢の服を寛げ、一切の躊躇いもなしに、硬く上向くペニスを唇奥へ招いた。 あたたかく湿り渡った粘膜。 まるで強請るように絡みつく舌先。 上目遣いに向けられる火照った眼差し。 そうか、これは、あいつに覚え込まされた……。 「……もういい、やめろ」 いつになく低い声音に黒揚羽は身を竦ませた。 「足長、」 「もういい、こっちに」 一瞬で不安に射竦められて凍りついていた黒揚羽を、足長は、再びテーブルに無造作に座らせた。 先程の黒揚羽の手順をなぞるように、余裕のない手つきで寛げた下肢の服を一息にずりおろし、硬く息づくペニスを露出させ……。 「あ……っ!」 黒揚羽の艶やかな喉が薄闇の中で反り返った。 咄嗟に後ろ手で上体を支え、もう片方の手を、揺れ動く足長の頭に添える。 はしたない水音が深夜の静けさに絡みつく。 理性が麻痺したかのように舐められながら吸われて、声が、止まらなくなる。 「あ、あ、あ……んっ……あ、ぁ……ッ!!」 ペニスだけじゃなく、尻の窄まりまで、その奥まで。 「や……っあ……ぁ……っぁぁぁ……っ」 欲しい、そこに、足長の、もっともっと奥に。 俺の全てを足長に捧げ尽くしたい。 「も……う、来て……足長……」 さらに両足を開いて恥ずかしげもなく希こいねがった。 テーブルに自ら仰向けになって、震える指先で、濡れた後孔をぎこちなくなぞった。 「この奥まで来て……」 怖いくらい急く鼓動、体内に籠もりゆく熱、解放を求めて暴れる肉欲。 「……あ、ん……ぁ……はぁ……」 押し当てられて、めり込んで、捻じ込まれる。 拡げられて、さらに熱せられて、病みつきになりそうな痛みにどうしようもなく欲情する。 「……あ……もっと、来て……」 涙で双眸が溺れる黒揚羽は足長に縋りついた。 やっと手に入れたぬくもり。 求めていたその両腕におさまることができた。 たとえ限られた時間でも嬉しくて堪らない……。 「あっっ」 一息に最奥まで届いた頂き。 肉と肉が濃密に縺れ合う、淫らな摩擦が、始まる。 互いに止め処なく濡れ合う。 「あ……あ……足長……っもっと……お願い、もっと……」 黒揚羽は貫かれる度に扇情的な吐息を紡ぎ、身悶えて、次に飢えた。 一言も発さずに、ただ荒い息遣いを繰り返して腰を突き動かす足長に、身も心も委ねた。 「足長……っ俺の奥に……奥で……このまま……」 眠りについていた翅がやっと目覚めたような気がした。 もうすぐ夜が終わる。 夜明けをすぐ目前に控えて、足長は、呟いた。 「いつか鬼蜘蛛の巣から助け出すから」 足長のジャケットを羽織ってベンチに座っていた黒揚羽は、そっと俯くと、首を左右に振った。 隣に座る愛しい幼馴染みの肩にもたれかかる。 「いい、別に」 「……自由になりたくないのかよ」 教室と同じ様子に戻った足長に黒揚羽は俯いたまま微笑みかけた。 羽化はもう迎えた。 求めるものはいつだってここにある。 「お前の腕の中でなら何度でも自由になれるよ、足長」 end

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