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いぬのおまわりさん♪-3

「お巡りさん、こんにちは!」 交番前で町行く人達を見守るは犬のお巡りさん。 「こんにちわん、暗くなる前にお家に帰るんだよ?」 憧れていた交番勤務について数年が経つ犬のお巡りさん。 こども達にもお年寄りにも小動物にも小鳥にも懐かれる、それはそれは優しい性格の持ち主さんです。 「わん?」 そんな犬のお巡りさん、最近、誰かに見られているような気がしてなりません。 ですが辺りを見回してもそれらしい人物は見当たらず、たまたま目が合った町の人達に笑い返されるばかり、自分もニコニコ笑い返しながらも、ちょっとした違和感がずっと気になっていました。 もしかしてあの人が戻ってきたんじゃ。 『淫乱なお巡りさんですね』 かつて自分を手籠めにした狼の指名手配犯が脳裏に蘇って、犬のお巡りさん、ぎゅっと拳を握ります。 今度こそこの手で捕まえてやるわん。 絶対、ぜーーーったいに、お縄を頂戴してやるわん! ある夜のことでした。 「こんばんは、お巡りさん、突然ですけど助けてください」 チャリに乗って町内を巡回していた犬のお巡りさんはどきっとします。 「部屋にアイツがいるんです、お願いします、やっつけてください」 犬のお巡りさんを呼び止めたのは、それはそれは美形イケメンな、仔猫ちゃんDKでした。 なんてこたぁないDK制服がよっく似合っています。 客引きお嬢様達もアフター中のお嬢様達も見惚れるくらいキラキラ目立っています。 仔猫ちゃんDKのキラキラ魅力に圧倒されながらも、犬のお巡りさん、職務を全うするため気を取り直して質問します。 「部屋に誰かいるんですか?」 「います、姿は見えないけど、キッチンに隠れてます、気配でわかります」 「そうですか、お家はどちら?」 「こっちです、来て下さい」 仔猫ちゃんDKが連れて行った先は高級マンション。 しかも交番から目と鼻の先にありました。 「あーっ、出てきてます」 「えっ、どこですかっ?」 「あそこです、あの隙間、ほら、動いてます」 仔猫ちゃんDKが指差す先にいたのは……カサカサ這い回る黒いアイツでした。 犬のお巡りさん、憤慨して非常識DKに説教するかと思いきや。 「きゃーーーー!」 黒いアイツが苦手な犬のお巡りさん、思わず叫んで仔猫ちゃんDKの背中に隠れてしまいます。 まるで乙女です。 すると仔猫ちゃんDK、犬のお巡りさんを呼んでおきながら、自分ですっぱーーーん! 丸めた雑誌でやっつけてしまいました。 単なる口実だったのです。 犬のお巡りさんをお家に呼びたかっただけなのです。 「もうオレがやっつけました、大丈夫ですよ」 「ほ、ほんとに? 死んだフリしてない? いきなりまたカサカサしないわんっ?」 怯える犬のお巡りさんのため、てきぱき処理、そうして改めて向かい合います。 「オレのこと覚えてませんか」 黒いアイツとの遭遇にてんぱって腰の拳銃に手が伸びかけていた犬のお巡りさん、キョトンします。 「オレ、数年前に迷子になってお巡りさんに家まで送ってもらった猫です」

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