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選ばれし中二病設定メシアは敵にぞっこんで候-2

「やっぱ寒くなるとすき焼きうまいな!」 「……あっさり湯豆腐で食べようと思ったんだが」 「あー長ネギ嫌いだから影守サンにあげるわ、はい!」 「……長ネギには体を温める効能があってだな、」 「肉うまー!!」 隙間風のひどい薄暗い四畳半にしばし砂糖や酒の甘ったるい割り下の香りがふんわり充満した。 ボロ布に包まれた妖刀「十六夜」は無造作に玄関前に置かれている。 またどこか近くで猫がにゃあにゃあ鳴いていた。 「ごちそうさま!!」 満腹になった由堕はてきぱき後片付けを始める。 使った鍋やお茶碗などを洗い、綺麗に拭いて、ものの乏しい食器棚に慣れた手つきで仕舞う。 雨漏りの跡がある土壁にもたれた影守はノスタルジックな丸眼鏡越しに、意味深に、自分の知らない流行曲を鼻歌で歌う由堕を眺めていた。 「人魚女」の血で全身をひどく鮮やかな深紅に濡らした少年と同一人物とはとても思えない。 極普通の、中間テストや期末テストが迫る度に慌てて秀才の友達から勉強を教えてもらうような、体育の成績だけはダントツいい、クラスの女子ウケはそこまでなのに校内一の美少女ヒロインから好かれそうな、そんな感じ……。 影守は眼鏡を外した。 半纏も脱いだ。 ぼさぼさだった髪をさっと五指で梳いた。 するとどうだろう。 野暮ったかった外見があっという間にさも敵役らしい貫禄に漲った。 すっと立ち上がり、食後のデザートがないか冷蔵庫を物色している由堕の背後に……。 「……影守サン」 長袖シャツを纏う腕が学ランに包まれた胸元に絡みつく。 由堕はつやつやした健康的な頬を一瞬でさっと赤く染めた。 「気配は察していただろう」 「……」 「すぐそこにある十六夜を喚んで喉元に突きつけることが、君なら、できただろう」 影守は冷気を洩らす冷蔵庫の蓋をぱたんと閉じた。 俯きがちでいる由堕の向きを変えて正面を合わせる。 困ったように眉間に皺を寄せて斜め下を凝視していた由堕だったが。 恐る恐る、誰もが魅入られる眩い輝きに満ちた双眸を影守へ向けた。 「……影守サン……」 由堕は自ら自分より長身の影守へキスした。 影守は応えてやる。 直に触れれば意外にも柔らかな唇を暖めるように、下顎を長い指先で固定し、啄ばむ。 「ぁ……っんぅ……ふ……」 由堕は影守のシャツをぎゅっと握り締めた。 唾液まみれになった唇を何度も開閉させて、巧みに蠢く影守の舌をもっと感じ取ろうとする。 「は……ふ……ぁ……っぅ」 影守は由堕の細い腰を抱き寄せ、学ランの厚い生地越しに体の線をなぞり、そのままかたちのいい尻も撫でた。 揉み解すように掌をぐいぐい押しつける。 「ふぁ……ん」 外見から見ると影守が年上のようにも見えるが。 実際、創世樹に選ばれし反救世主由堕の方が数倍も年上である。 そんな年の差をまるで感じさせない由堕の外見通りの初心な反応を影守は結構気に入っている。

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