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キミは愛しのつばさちゃん号/擬人化バス×青年運転士
「次はスポーツセンター前です、お降りの方はいらっしゃいませんかー?」
岡崎颯真 は一般路線バスの新人運転士だ。
子供の頃から乗り物ゲームが大好きで、小学校時代に書いた「将来の夢」作文ではみんなを乗せるバスの運転手になりたいと書いていた、つまり夢を叶えた努力家青年だった。
「ありがとうございます、運転手さん」
「ばいばーい!」
「ばいばい、気を付けて帰るんだよ」
颯真が運転するは片道一時間ほどの路線を往復運行する市営ミニバス。
白を基調とした車体、青空を表した爽やかブルーのラインが走り、太陽を表した鮮やかオレンジラインがその上に連なる。
通称「つばさちゃん」。
しろつばさ団地を通るため、そんなネーミングがつけられた。
「つばさちゃん、今日もお疲れ様!」
夜七時過ぎ、最終運行を終えて乗客すべてが降りたバスを営業所へ走らせながら、颯真は笑顔で相棒つばさちゃんを労う。
ちなみに颯真の脳内イメージつばさちゃん、萌え~☆美少女だ。
「颯真さん、今日もおつかれさまでした、てへっ☆」「にゃんこちゃんがお通り中だからちょっと待機なのですヨ☆」「きゃ! 雷は苦手ですぅ☆」「今日はいっぱい汗かいちゃった……あとで綺麗にしてくれますか?///」
脳内ボイスはあまあまきゅんきゅんボイスだ。
街外れにある古びた営業所に到着した。
トタン板に囲まれた簡素な車庫へ小回りの利くつばさちゃんを走り込ませ、位置を調整し、エンジンストップ。
「また明日も頑張ろうね、つばさちゃん」
ハキハキしたアナウスに爽やかな外見で乗客からの評判はいいものの、ちょっとイタイところがある残念属性の颯真、シートベルトを外してずっと座り続けていた運転席から立ち上がり、バスを降りようとした、ら。
「えっ」
後部座席に一人の乗客がいることに気が付いて仰天した。
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