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だから僕は奴隷(-_-;)-11
恋愛中の女子ならばたいてい心躍る好きな人の誕生日。
「あ? 緋人の誕プレに手作りおかし?」
夏休み中、幼稚園並みに騒がしいおばか高校、補講が開かれている教室にて。
「とうとう性転換手術に踏み切って耶麻音から耶麻子ちゃんになるわけか」
特に目的もなくイスに踏ん反り返ってスマホをだらだらいじっていた二階堂宇佐、舌ピアスに黒マニキュアで眼鏡なヤンキー男子だ。
もしも女子として生まれていたならバンギャ直行だったに違いない。
「そーそー、この度、鏑耶麻音は女子耶麻子ちゃんに生まれ変わって緋人とハデ婚するのっ、じゃないし、オネエ扱いは心外なんでやめてくれるかなー、クソぴょんちゃん」
一方、宇佐の机に腰かけてヤンキー友達と向かい合っている鏑耶麻音、毎晩トリートメントは欠かさない自慢の髪を毎朝女子風にアレンジして登校してくるチャラいヤンキー男子だ。
もしも女子として生まれていたなら人気キャバ嬢直行だったに違いない。
「これまでスルーしてたから、たまには、ね。緋人に日頃の感謝も込めて?」
「さっぶ、きっも」
「ふーん、じゃあ宇佐はいーよ、俺は材料買いにいこっと、緋人喜んでくれるだろーな、楽しみー」
「……勝手にやってろ、クソねずみ」
そして緋人の誕生日当日。
「ねーねー、これなーに?」
ギャルが住んでいそうなデーハーインテリアが派手目立つ別宅で緋人が来るのを待ち構えていた当の住人は、ぎょっとした。
「げ!!」
「キッチンの棚に隠すみたいに置いてあったんだけど、爆弾? もしかして爆弾じゃない?」
「こンのクソねずみッ」
「捨ててこよっか? しかもコレ、手作り爆弾じゃない? やばッ、こわッ」
「あーまぁな、ポョコとモョコ姉に教えてもらったわ」
「ぶはッッ……ガチで爆弾じゃん、つーか俺の元カノと和気藹々しないでくれる、何かと迷惑デス」
「つぅかテメェこのウソツキが、なにが手作りだ、高ぇブランドチョコなんざ買いやがって、どっかのデブキモオッサンに股開いて稼いだ金で買ったモンとか緋人に食わせんなって、腹壊すだろ」
「誰がデブキモオッサンに股開くか、開くとしても高給取りで上限アラサーでイケメンじゃないと、クソぴょん肉便器ちゃんのお尻なら誰だって大歓迎なんだろーけど、つーかガチで手作りウケる、ガチ愛情おもスギ、あたって食中毒になっちゃうじゃん、緋人がかわいそ」
相変わらず聞くに耐えない口喧嘩+取っ組み合いに熱中するデーハ―ヤンキー男子二人。
そこへ。
「……チャイム押しても返事がないから勝手にお邪魔しました……」
嵯峨野緋人がやってきた。
耶麻音の髪を引っ掴んでいた宇佐は、宇佐の眼鏡を割ろうとしていた耶麻音は、二人揃ってぴたりと静止して生涯奴隷に目をやると。
「お、緋人……テメェ、窓から住人顔で入ってくる野良猫かよ」
「あ、緋人ってば今日も勉強してきたの……?」
何となくぎくしゃくした態度。
慣れないことをしたものだから珍しく緊張しているようだ。
午前中に学校で講習を受けて制服姿である緋人の視線は、二人が手にしている、それはそれは綺麗にラッピングされたプレゼントに自然と吸い寄せられた。
「……それって」
ビクゥゥゥッ、その名の通り、まるで小動物みたいに過剰に反応した宇佐と耶麻音。
「ひ、日頃奴隷としてよくやってくてれってから? その仕事ぶりを称えて? 恵んでやるみてぇな?」
「そ、そーそー、そーそーそーそー!
ぎくしゃくな二人からプレゼントを同時に差し出されて、緋人は、両手でそれらを受け取った。
「……ありがとう(*-_-;)」
お?
「二人からもらえるなんて思ってなかったから、びっくりして……でも、嬉しいです(*-_-*)」
おーーーーーー!?
上々な緋人の反応に宇佐も耶麻音も、片想いが成就した女子さながらに頬をぽぉぉぉぉっと茜色に染めた。
気持ちが昂揚していつもと違うことがしたくなる。
緋人と二人っきりで甘々なひと時を過ごしたくなる。
「……帰れ、耶麻音」
「え、なにそれ、ひど」
「か・え・れ」
「帰んなーい、夜まで長居するー、何ならお泊まりするー」
また口喧嘩を始めそうな二人であったが。
時間が惜しい。
早く緋人と二人っきりになってスケベなことをバカみたいにしまくりたい。
「クソ、しょうがねぇな、じゃあいつもの、な」
「今日は勝ちに行きマース」
宇佐と耶麻音は毎回恒例の、そう、じゃんけんぽん、を。
さて勝敗は。
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