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ぎぶみーらんじぇりー-3

「ほ、ほんと……彩羽遅いなぁ、ごめんなさい」 嬉しそうにしていた葵がまた申し訳なさそうに表情を強張らせたので、浩哉は、首を左右に振った。 「葵君と二人きりになるのは初めてだよね」 「あ……ほんと、そうですね」 「だから。いいよ。そんな気にしないで」 え? それってどういうイミだろう? 「よいしょ」 おもむろに浩哉が腰を上げたのでトイレかと思った葵だが。 部屋を出ず、隣に座ってきたカテキョに、黒目がちの双眸を丸くさせた。 「二人きりでしかできない話、する?」 「え……どんな話、ですか……?」 「俺の好きな人の話」 え! 浩哉せんせい、好きな人いるの? カノジョがいないことは確認したって、彩羽、言ってたけど……えええ~……絶対落ち込んじゃうよ、彩羽……あれ、でも……もしかして……ひょっとして……? 「彩羽ですかっ?」 今度は浩哉がレンズ下で切れ長な目を丸くさせる。 「せんせいの好きな人って彩羽ですかっ?」 「残念ながら。それは違うかな」 あ……。 どうしよ……。 この後、彩羽、せんせいに告白するつもりなのに……。 「葵君?」 たちまち涙で滲んだ黒目がちの双眸に浩哉はびっくりした。 「えっと……大丈夫です、ごめんなさいっ……あ、ケーキ、これ彩羽が選んだんです、せんせいが一番好きなの、二つ先の駅近くのケーキ屋さんで、おいしくて有名だからって……ぅぅぅ……っ……ごめ、なさ……」 彩羽、ごめん、なんかごめん。 すごくごめん……。 「ごめんね」 葵は……何度も瞬きした。 瑞々しい頬を伝い落ちていく涙。 浩哉の服にまで浸みこんでいく。 「俺が好きなのはね、君だから、葵君」 え。 ええええええ。 「今日言うつもりじゃなかったんだけど。こんな格好で、見慣れなくて、すごくかわいくて……言ってみました」 イケメンカテキョからのまさかの告白と抱擁に葵は彫像の如く固まった。 抱擁を拒否しない教え子の姿にレンズ下で意味深に細められた切れ長な目。 実のところパジャマ姿に悩殺されてやや理性を欠いていた浩哉は先走らざるをえず。 「あ」 細い顎を掬うと中学生双子の弟にそっとキスした。 あまりにも突然の抱擁、告白、キスに葵は葵ですっかり浮き足立ってしまっていた。 「んっんっ……ぅ……ふ……っ」 しかもディープキス。 彩羽以外の女子と手を繋いだ経験のない童貞男子には刺激が強すぎた。 これまで一度も彼女がいなかったことを聞き知っていた浩哉は優しく振る舞った。 優しいながらも……えろかった。 僅かに震える初心な唇の虜になってどえらく長いキスを続けた。 ふ、ふやけそう……。 何も考えられなくなっちゃう……。 あれだけ詫びていた彩羽の存在もポーーンと飛んでしまうくらい熱烈な初キスに頭がふわふわしてきたところで。 葵は浩哉にゆっくり押し倒された。 無防備にも程がある様と成り果てた教え子にカテキョのキスは止まらない。 「んむ……ぅ……っ」 そう。 葵はそのことまですっかり忘れていた。 自分がパジャマで必死になって隠したはずのソレ。 パジャマ上が僅かに捲れて覗いた軽薄なその色に気が付いた浩哉は。 「……葵君、パジャマの下に何か着てる?」 ……あーーーーーーーーっっっ。

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