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ぽっちゃり系君の○秘トレーニング-3

夜十一時、小学校体育教師の有原宅にて。 主の有原は夜中のニュース番組を真剣な眼差しで鑑賞中だった。 目つき悪し、態度悪しといえどもやはり教師、こどもたちを導く教育者として世の中の問題と向かい合い、見識を備えておく必要があると、常日頃ちゃんと情報収集を心がけているのだ。 さて、そんな真剣な眼差しの有原がベッドに横になって抱えているのはジュゴンのぬいぐるみだ。 ベッドはジュゴン、マナティのぬいぐるみだらけ、極めつけは今は亡きステラーカイギュウの抱き枕。 さて、そんなジュゴンを抱きしめて有原が寝そべるベッド傍らには荷物の詰まったスポーツバッグが。 学校行事の夏休み野外宿泊活動がいよいよ始まる。 「せんせ~有原せんせ~」 正午前、日の光が燦々と降り注ぐ高原。 貸切バスからクラスメートといっしょに降りてきたよしお君、別のバスに乗っていた、○秘トレーニングで日頃お世話になっている有原を見つけるなり、ぽてぽて駆け足でやってきた。 「よしお、リュック、えらく膨らんでるな」 「えへへぇ、コンソメポテトチップスと海苔しおポテトチップスとチーズポテトチップス!」 「お前、ちゃんと着替えやスケッチ用の色鉛筆や日記帳、持ってきたか?」 「あっ、あとクリームぱぁん!」 半袖シャツはぽちゃぽちゃ二の腕を際立たせる。 半ズボンはもちもちふくらはぎを際立たせる。 「今日のばんごはん、カレぇライス、楽しみ~」 「飯で浮かれるのもいいけどケガするなよ、よしお」 俺もぽっちゃり夏よしおに浮かれてケガしないように気を付けなければ。 宿泊先は少年自然の家、二泊三日、過密スケジュール、体験学習目白押し。 一日目の午後、自然体験スケッチ時間、生徒たちは思い思いに草原に座り込み、爽やかな青色や緑色で画用紙を埋め尽くしていく。 蝉時雨の降り注ぐ木陰でスケッチ中のよしお君、有原は全体見回りをさぼってよしお君の周囲を限定的に行ったり来たり。 「お絵描き楽しい~」 「よしお、それ何だ」 「クリームぱぁん」 「せっかく自然いっぱいの場所に来たんだ、風景を描いたらどうだ」 切り株に座ったよしお君はすぐ傍らに立った有原を悲しそうに見上げた。 「いや、いい、好きなだけ描け、クリームパンで埋め尽くしてみろ」 夕方からはみんなで手作りカレーライス。 「たまねぎ、目がしみるよぉ」 他の教師、友達同士でおしゃべりしながら準備している他の生徒に背を向けた有原、よしお君担当のたまねぎ刻みをぜーんぶ代わりに素早くやってしまった。 「カレぇライスおいしいね~あ~でもにんじんやだ~きらい~」 「よし君、おれが食べようか?」 同じテーブルに着く、よしお君属するグループの班長男子がそう言うと、よしお君は嬉しそうにうんうん頷いた。 そんなやり取りを見ていた有原、よしお君の皿をひょいっと自分の手元に。 「時宗(ときむね)、友達を甘やかすな」 「有原先生、でも、よし君のにんじん自分の皿に移してますよね?」 時宗、女子に囲まれてデレているかと思いきや、ちゃんと班長然としていて班員一人一人に目を配っている、リーダーにふさわしい責任感ある生徒だ。 が、よしおの世話は俺担当、だ。 「俺はにんじんが好物なんだ」 「せんせ~うさぎさんみたい~」 夜八時には大広間で特別怪談タイム。 明かりを落とした室内、普段は温厚で優しい中山先生が懐中電灯片手に身振り手振りで怖~い話をすると、生徒たちはキャーキャー大盛り上がりだ。 「怖いよぉ」 よしお君が隣をすかさず陣取っていた有原の腕をぎゅっとしてくる。 ぽよんぽよんおっぱいが当たって有原は夢心地だったが。 「よし君、だいじょうぶだよ」 反対側の隣にいた時宗が声をかけてきた。 「時宗、中山先生のお話に集中しろ」 運動神経抜群、クラス一番の成績を誇る時宗、有原の注意に頷きつつもまだよしお君を気にしている。 中山先生の怪談話に最も集中していない有原、いつの間にぐぅぐぅ眠ったよしお君にしっかり腕を回し、隣で未だ気にしている時宗を牽制するのだった。

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