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鬼門なあのコ/高校生×近所のコ/ご近所おにしょた
「おかえりー圭」
マンション自宅に帰ると家族でもなく親戚でもないガキがダイニングテーブルに着いて母親手作りのケーキを食べていた。
高校生の御厨圭 はため息を噛み殺す。
「また来てんのか、祥太 」
億劫そうな物言いに、祥太の向かい側にいた圭の母親が文句を言ってくる。
圭はそれを聞き流してさっさと自分の部屋に引っ込んだ。
半年前、祥太は看護士の母親と一緒にこのマンションへ引っ越してきた。
元から圭の両親と知り合いであり、週半分は夕飯まで食べていくほど祥太は御厨家に入り浸っていた。
「なーなー圭」
宿題をしていたらノックもせずに部屋へ入ってきた祥太を圭は無視しようとするのだが。
「あ、やった、新刊買ってる、読もっと」
「あ、このやろ」
ベッドにぼふんとうつ伏せになってこの間買ったばかりの単行本を読み始めたので、眼鏡をかけ直し、肩を竦めた。
「お前、友達いねーのかよ……ほぼ毎日来やがって」
「んー? 何人かいるけど、おれ、わいわいはしゃぐタイプじゃないし」
ランドセル背負う年齢で言う台詞か、それ。
圭は仕方なく祥太の好きにさせてやり、宿題に集中することにした。
六分後。
すぅすぅ寝息が聞こえてきた。
振り返れば、祥太は仰向けになって腹を出して眠っていた。
呆れ返るが苛立つこともなく、余所のガキに風邪を引かれたら困ると思った圭はタオルケットでもかけてやろうかと立ち上がった……。
祥太は鬼門だ。
次の日、帰り道、偶然にも友達と一緒に歩いていた祥太を見つけ、圭はつい足を止めた。
友達は女の子だった。
二人きりで、女の子の方は楽しそうに祥太に話しかけている。
「あー圭だ」
意味もなく電線や自動販売機を眺めていた祥太は圭の姿を見つけるなり、隣の女の子にバイバイし、駆け足で通学路を走ってきた。
「圭ーアイスおごって」
「……金ねーよ……ていうか、いいのか?」
「え?」
真顔で祥太に問い返されて、圭は、もう何も言わずにいた。
そのまま祥太は御厨家へやってきた。
そして食卓で圭は母親からいきなり明日の予定を告げられたのだ。
「明日、お母さん達法事で泊まりだから」
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