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俺達はそんな君にひとめぼれした-4

夏休みが始まってからというものの田中太一の母親は上機嫌だった。 「こんにちは、おかあさん」 「水羊羹、よかったらどうぞ」 太一の先輩友達という京乃と九月が後輩の勉強を見にちょくちょく自宅訪問するようになったからだ。 ダークブラウンのサラサラ髪をさらりと靡かせて眼鏡男子の京乃は涼しげな微笑と共に卒がなく一礼する。 ちょっと鋭い眼差しの目つきワル男子ながらも礼儀正しい九月はブレない態度で気持ちいいくらい背筋をすっと伸ばしている。 どこからどう見ても平凡男子の太一、辟易、はらはら、気恥ずかしいやら何やら。 『もっと先っぽ、いっぱい、舐めてくれる?』 お母さん、この京乃さんはおれに……ざ……ざ……ザー飲させるのが堪んないって感じちゃうような先輩なんだよ? 『吸ってみて』 こっちの九月さんはすっごいカリ高で、おれに、がんしゃ……しちゃうような先輩なんだよ? そしておれはそんな先輩たちのせいでご奉仕に目覚めちゃって。 そんなおれはそんな先輩二人と約束……しちゃった。 『今度の花火大会の日に』 『お前の処女ほしい』 七月の終業式、太一は先輩二人からの直球欲求にコクンと頷いてみせた。 それまでお口ご奉仕はお預け。 花火大会が行われる八月最初の土曜日は明後日、解禁日はもうすぐだ、でも、そんな残り僅かな日数でも太一にとってはむず痒い、長い、途方もなく遠く感じられた。 「これ、数式自体が間違ってるよ、田中クン?」 「道理で全問不正解なわけだな」 母親が買い物に出ている間、冷房の効いたリビングで本当に自分の勉強を見てくれる京乃と九月に太一はむずむず、どきどき。 京乃からはイイ匂いがするし、九月の真っ直ぐな視線は胸をちりちり焦がすようで。 勉強に集中しなければと思いながらも太一の目はどうしても二人の下半身を行き来する。 し、したい、すごくご奉仕したい。 「こーら、田中クン?」 「どこ見てんだ」 午前中は学校の夏期講習に出、ネクタイを緩めた制服姿の京乃と九月に不純欲求をまんまと見透かされ、太一は耳までまっかになる。 「そんなにしゃぶりたいの?」 「土曜日には好きなだけ咥えさせてやる」 あからさまにそんなセリフを口にされると欲求が却って高まってしまう。 京乃に頭をなでなでされ、九月に耳たぶを軽く抓られると、太一はまっかっかに。 「だ、だめ、触られたら、もっとしゃぶりたくなっちゃいます」 「うーん、そんなにガマンできないなら、ね?」 「仕方ないな、明後日まで禁欲させとくつもりだったけど」 「えっ」 やった、やったぁぁ、京乃さんと九月さんの、ご、ご、ご奉仕でき…………!! 先輩二人がそれぞれ制服ズボンのファスナーに手をかけようとした矢先に玄関で響いた、帰宅した母親の「夕食はみんなで焼き肉よ」宣言。 太一は心底がっっっかり、京乃は苦笑し、九月はやたら長い指先にボールペンを持ち直した。 「やっぱりガマンね、田中クン?」 「ちゃんと勉強に集中しろ」 ガマンいやです、勉強集中できないです、二人の下半身にしか集中できないです。

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