335 / 596
いんきゅばす男子に御用心-5
インクはお早い空腹の解消をご所望だった。
夜八時過ぎ、まだ学生がちらほら居残るセンター棟の奥、夜桜飲み会を一人泣く泣く切り上げてきた千歳は人気のない真っ暗な講義室にこっそり忍び込み、お腹を空かせた貪欲インキュバスのお相手をする羽目に……。
「んむ……千歳の、今朝ぶりで、んまい」
そう。
今日も朝一からインクは千歳をがっつり召し上がっていた。
でも全っ然足りない。
しょうがない、インキュバスはそういう生き物なのだ。
「……はふ……ん」
ブラインドの閉ざされた窓際、連結テーブルの端っこに浅く腰掛けた千歳、その足の間に跪いて美味しそうに大好物をむぐむぐ頬張るインク。
柔らかく湿った口内にすっぽり包み込まれ、緩々と咀嚼され、千歳は「う」と堪えきれない声を洩らす。
どこからか聞こえてくる笑い声が室内の暗がりに溶けていく中、淫らで露骨な水音も規則正しく奏でられ、否応なしにえっちな雰囲気に。
大学のトイレでシたことはあるが、講義室というのは初めてで、新鮮な体験に千歳が興奮しているのも事実で。
……俺、清々しい夜を過ごしたいんじゃなかったのかよ?
「んむ……んむ……」
喉奥まで招かれて舌粘膜でたっぷり温められる。
細やかな動きで敏感なところを念入りにしつこく舐められ、鋭く尖った犬歯で先っぽを甘噛みされる。
「うわ」
「今朝より硬くなってんじゃねぇか、貴様の……ココだとコーフンすんのか?」
口の悪いインクは上目遣いに睨むように、際どい口淫に眉根を寄せている千歳をちらりと見上げた。
そして、あーんと口を大きく開き、卑猥としか言い様のない舌遣いで先っぽをべろべろべろべろ……。
バイオレットの双眸で挑発的に見られながらのおねだりに千歳は弱い。
インクが同居するようになってフルに使いこなしている熱源がさらにびきびきと怒張し、力強い脈動を始めた。
インクは豊潤なる味わいのワインじみた双眸をより色めかせる。
「出せ、だーせー、今すぐ俺様に捧げろ、おら、千歳?」
「わ、わ、わ、わ、わ」
再び口内にすっぽり押し包まれて思い切り音を立てて吸い上げられまくった。
結果、千歳、第一絶頂に至る。
ぶかぶかのパーカージャケットをミニワンピみたいに纏っていたインクの欲深なお口に白濁しきった欲望を解き放った。
「あ、あ、あ、イ、インク……!」
インクは人間千歳の精液をごっくんごっくん一滴残らず飲み干した。
ごっくんしている間も、ゆっくり根元をしごき、第二絶頂への準備を怠らない。
「……ぷは」
やっと離れた艶めく唇にとろりと伝う銀糸。
千歳が拭ってやれば、その親指に、悪戯に猫のように齧りついてくる。
「いて」
「俺様、もっと、もっと千歳が喰いたい」
「……腹壊さないのかよ、お前」
「千歳はいくら喰っても喰い足りねぇんだよ」
不意に、いつも傲慢で不吉で邪悪なはずのインクの表情が珍しく翳った。
滑々した頬を乙女の如く上気させ、窺うように、千歳をそっと見上げてくる。
「千歳は……違うのかよ」
「え?」
「俺様のこと……他の人間みてぇに……邪険にする?」
「……」
「俺様……邪魔くせぇ? もういらねぇ? 人間女の方がいい?」
なんだこれ、反則だろ。
やっぱ、こいつ、すげぇカワイイ。
ともだちにシェアしよう!