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ヒイキめろめろ猫かわいがりーの/先生×ややだる系生徒+ややゆる系生徒

高校で国語教師をやっている三十一歳の嶋(しま)は隠れゲイだ。 そんな嶋には大のお気に入りの生徒が二人いた。 「センセェ、俺、文化祭企画委員、やる」 時々だるい系、でも周囲との付き合いはちゃんとこなしている菊峯(きくみね)。 「仕事すんの、二学期だけだし、ほら、お前もやるだろ」 「ん……じゃあ俺もやります」 顔立ちはまぁまぁ、でも何気ない親切でクラスメート女子の人気をさり気なく集めている、少々ゆるい系の諏訪(すわ)。 中学が同じだった菊峯と諏訪は一年、二年と同じクラスであり、嶋は二年連続彼らの担任をしていた。 二人はとても仲がいい。 そして嶋によく懐いていた。 「昼いっしょ食おー、センセェ、ついでに風よけなって」 「コンビニのパンだけ? 俺のオカズあげるよ」 二人ともかわいいな。 極々普通の高校生、それなりに学校生活楽しんで勉強もまぁまぁ頑張ってる。 取り立てて突出している要素がない、本当にどの教室にもいそうなところがまたいい。 「おやつのポッキーもあげる」 「なに、諏訪、センセェとポッキーゲームでもすんの?」 遠足や体育祭といった行事ではよく俺のところに来てくれる。 あまり表には出さないようにしているが、うん、めちゃくちゃ嬉しい。 正直なところ猫かわいがりしたい。 もちろんヒイキになるからセーブしてますけど、ね。 「俺にもちょーだい」 「いいけど。ハイ」 「ぱくっ……んー、ふぇんふぇぃ、んー」 「何してるの、菊峯……向こうで女子がホモって騒いでるよ」 天国なようである意味、忍耐地獄だな。 ある日の放課後だった。 「二人とも、まだ残ってるのか」 帰宅する前、職員室出入り口に設置されている各教室の鍵が並ぶ保管コーナーを何気に見、自分のクラスのところにまだ鍵がぶら下がっておらず、嶋は首を傾げた。 夕方六時過ぎの教室を覗いてみたら菊峯と諏訪が二人っきりでおしゃべりしていた。 「お、センセー、いいとこ来た」 「うん?」 「男子トークしよ、男子会」 「もう六時過ぎてる。男子会は明日にしろ」 机に腰かけた菊峯は夕日に茶髪をキラキラさせながら笑った。 自分の席に着いた諏訪はポッキーをかじっている。 やっぱりかわいいな、二人。 もしかしてデキてる? いや、それはないな、女子が夏服になれば視線がそっちへ行きがちだった、どう考えてもノンケだろう。 「嶋センセイの恋愛話聞きたいでーす」 「センセイ、彼女は? まだいないの?」 「聞いたら帰るか? まだいない。ほら、教えたから帰る準備しろ」 ノーネクタイでアーガイル柄のセーターを着ている嶋がそう言えば二人は顔を見合わせて口々に言うのだ。 「変なの。なんで? センセー見た目悪くねーし、優しーし」 「包容力、あるし」 「背もまーまー高いもんな」 「何気に女子に好かれてる」 「他のセンセーにも割と頼られてっし?」 「服のセンスも何気にいい」 たじろぐくらいの褒め言葉の連続に嶋は苦笑した。 「なんだ、二人とも、えらく褒めてくれるな。もしかして俺に惚れたか?」 その一言に和やかだった二人の空気がピシリとかたまった。 さすがに今のはヒいたかと、すぐにフォローの言葉を入れようとした嶋だったが。 二人揃ってこっくり頷いたので。 これまでに見覚えのない、見ている方の胸がくすぐったくなるような、何とも言いようのない表情で二人同時にじっと見つめてきたので。 「……え?」 急な昂揚感に貫かれてその場で棒立ちになった嶋。 そんな放課後から一ヶ月近くが経過した。 「お邪魔しまーす」 「お邪魔します、センセイ」

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