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昔々、浦島は助けた亀と……?-3
ざぶーん……
穏やかな波が打ち寄せる砂浜。
漁を終えた浦島は草履でさくさくと砂の上を進む。
その隣には笑顔が可憐な、漁村暮らしの人々がこれまで見たこともない、見目麗しい顔立ちをした者が寄り添っていた。
長い髪には珊瑚の髪飾り。
濡れたようなしとやかな肌に張りつく白っぽい浴衣。
華奢な腰から覗く朱色の帯。
黒目がちの大きな双眸、紅を引いたような唇は、ずっと嬉しそうに綻んでいる。
村の男達は羨ましがり、二十代現役ばりばりの逞しい浦島を旦那にしたいと密かに狙っていた女達はキィキィ嫉妬した。
「だけど、いつの間に」
「どこから来た娘さんなのかねぇ」
彼らは当然知らない。
浦島に寄り添う彼の者が、実は雄で、しかも亀だということを。
「小宇羅、今日も可愛いね」
「あ……浦島様、まだ日が高い時分に、そのような」
「いいでしょ、だって、明るいと小宇羅の綺麗な体がよく見える」
「あ」
「こことかね」
「きゃっ」
「ここもね」
まだ夕方も迎えていない時間帯。
早々と畳の上に布団を敷いた浦島は、組み敷いた小宇羅の浴衣を大いに乱し、柔肌に口づけてきた。
最初は恥ずかしがっていた小宇羅も、浦島の熱烈な唇に徐々に身も心も蕩け、潮の香り漂う逞しい体に自らしがみついて。
「ふ……ぁ、うらしま、様ぁ」
水音の絶えない接吻に応えてきた。
浦島は小宇羅を抱いて起き上がり、膝上に華奢な体を跨らせ、向かい合って正面をぴったり重ねた。
昨夜、夜明け近くまで可愛がった小宇羅をまた丹念に愛撫してやる。
昨夜の跡を唇でなぞると、まだ余韻が残っていたのか。
しどけない反応をいつもより早く見せ始めた。
「あ、やぁ……ん」
「いつもより感度いいみたいだね、小宇羅の体」
「そ、そのようなこと」
「そう? 乳首、もう勃ってるけど?」
ぷっくり尖った胸の突起を指の腹でくすぐってみる。
小さな突起の天辺をくるくる回すように擦ってみる。
「あっ」
「ほら、すぐ感じてる。朝方までいっぱい舐めてあげたからかな?」
「やぁん」
「ほらほら、いいんでしょ?」
長い髪に鼻先を埋めると赤い耳たぶ近くで囁いてやる。
二つの乳首を人差し指と中指で挟み込んで小刻みに擦ってみると、首をすぼめ、露出した内腿をびくびく震わせた。
「つまりさ、僕、ほぼ一睡もしてないんだよね」
「あっあっ」
「だけど全然眠くならないし、むしろ冴えてる感じ?」
「ひゃぁぁ……」
「それに毎日面白いくらい大漁だし」
全て、海の眷属にある人外小宇羅のおかげである。
だが小宇羅は自ら浦島に伝えたことはなかった。
恩恵目的で浦島に愛されることを恐れたから。
興奮の波に身を委ねながらも、小宇羅の心は、ちょっと怯えた。
浦島はそんな小宇羅の美しい髪に接吻して言う。
「僕、何かツイてるみたい」
「……え?」
「そういえば正月に神社でオミクジ引いた時も大吉だったんだ」
「……」
「小宇羅と出会えたのも、きっと、僕の運のおかげだね」
「……浦島様」
少々お馬鹿な浦島に小宇羅はぎゅっと抱きついた。
「ボク……浦島様に出会えて幸せです」
「僕もだよ、小宇羅」
まだ明るい日の光を反射して白く浮き上がる障子。
土間を挟んだ畳の上で、小宇羅は、仰向けになった浦島の上にまた跨っていた。
隆々とした浦島の雄肉は小宇羅の菊花に深く埋められている。
時に浦島が下から突き上げたり、時に小宇羅自らが腰をくねらせたりし、互いに濃密なひと時を堪能していた。
「昨日より……浦島様のご子息様……立派で、す」
可憐な笑顔に艶やかな媚笑を含ませた小宇羅は、割れた腹筋に両手を突いて、前後に腰を振る。
「ああ……それ、すごくいいよ、小宇羅……」
浦島は満足そうに口元を緩ませて、細身の肢体に両手を添え、小宇羅の腰振りを手伝ってやる。
小宇羅の動きに合わせて細い腰を揺さぶってやる。
雄肉と粘膜が淫らに擦れ合う。
「ああっすごぉい……奥まで、こんな、擦れて……っ」
「あぁぁあっ小宇羅の中っ最高だよっっ」
浦島は腰が浮くほどに小宇羅を下から立て続けに攻めた。
真下からの猛攻に耐え切れず、思わず体勢を崩した小宇羅。
浦島は小宇羅の背中を支えてくるりと反転し、今度は彼を仰向けにさせ、自分が上体を起こした。
小宇羅の足を持ち上げて日焼けした両肩に引っ掛け、ぐっと前のめりとなり、激しく突き動く。
「やぁぁ……っあん、うらしま、様ぁ……ボク、もぉ」
「もういっちゃうっ? いいよっ? 僕もいくからっっ」
「ひゃぁぁっっ」
布団を握り締めていた浦島の手を小宇羅は掴んだ。
汗を散らしながら律動する浦島と、身悶える小宇羅は、見つめ合った。
下肢と同様に唇も深く重ね合う。
「う……!」
「んんんっ」
そして絶頂の一瞬を一緒に迎えた……。
「……小宇羅さまー」
浦島が布団でぐうぐう寝ている最中、戸を開く者がいた。
むにゃむにゃ寝言を洩らす愛しい男を団扇で扇いでやっていた小宇羅は、ちらっと、自分を呼ぶものを見る。
「そろそろ竜宮城に帰りませんかー?」
「古くから仕えている小宇羅さまがお戻りにならないから乙姫様がお困りですー」
竜宮城から出された使いの者達だった。
子供の姿をしているが、実のところ、小宇羅と同じく海に棲む眷属だった。
小宇羅はにっこり可憐なる微笑みを浮かべた。
「私はこの男のものとなりました」
ボク、きっと、玉手箱よりかは使い勝手ありますよね?
そして、浦島の額に、それはそれは幸せそうに口づけしたのだった。
end
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