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血迷いラプソディ/好青年教師×わんぱく生徒←変態美形教師/先生おにしょた

オレ、鈴宮理壱(すずみやりいち)は今日の給食がシーフードカレーというだけで朝っぱらからハイテンションだった。 「鈴宮、うるさい」 朝、ホームルームで友達と騒いでいたら近くの席の女子一同から注意された。 うるさい、ブス、と言い返したら「ホント、ガキ」「幼稚園に戻ればいいのに」と言い返される。 うわ、むかつく。 お前らだって雑誌見ながら騒いでたじゃねーか。 ていうか学校にそんなモン持ってくるんじゃねーよ。 「鈴宮君、声が大きいですよ」 担任の清見(きよみ)先生に注意された。 でも、清見先生って全然怖くないから平気だもんね。 やんわり口調で女子に好かれていて、オレにはよくわかんないけど、生徒の親とかPTAっていうやつにも評判がいいんだってさ。 一時間目の授業はオレが大好きな体育。 しかもドッジボール。 よーし、正々堂々仕返ししてやる。 「きゃあ!」 「痛いっ」 「すげ~! 一度に二人もやっつけたよ、リイチ!」 「リイチと一緒のチームだと絶対負けねぇ!」 「ちょっと、加減しろよ、バカ鈴宮!」 「うっせーブス!」 「鈴宮チーム、サイテー」 「清見センセェ、注意してください」 「鈴宮君、女子相手に全力投球は…」 「喰らえ、ブス!」 「痛い!」 「てめぇ、バカ鈴宮、調子乗んなよ!」 「おーい、ケンカはやめなさい…」 給食の時間。 シーフードカレー。 デザートのプリン。 机を寄せて集まった仲のいい友達。 好きなものに囲まれてオレのテンションは一気にマックスへ。 「牛乳一気飲みレースしよう!」 「鈴宮君、それは駄目です」 オレの発言を耳にした清見先生がすかさずやってきた。 ちぇ、ケチ。 あっちで女子と食べてればいいのに「それは危険だからね、絶対に駄目ですよ」と清見先生はイスを持ってくるとオレ達のそばで食べ始めた。 うわ、最悪。 早く食べて逃げようっと。 「ごちそーさまでした! じゃあ外で遊ぶぞ!」 今日はすごくいい天気だった。 オレ達以外にも外へ出てきている生徒は多くて、運動場の真ん中はすでに隣のCクラスに陣取られていた。 あ、日向(ひゅうが)先生だ。 サッカーやってる。 いいなぁ、楽しそう。 でも恥ずかしいから「混ぜて」なんて言えないや。 しょーがない、端っこの鉄棒で「誰が一番連続逆上がりできるかゲーム」でもしよう。 「誰が一番連続逆上がりできるかゲーム」で疲れたオレは午後の授業をほとんど寝て過ごした。 清見先生が何か言ってたみたいだけど、昨日もあまり寝てなかったから、オレってば掃除の時間まで机に突っ伏していた。 ふわぁ、よく寝た。 家より学校の方が寝やすいや。 友達とか、すぐそばにいっぱい誰かがいるからかな。 帰りのホームルーム、ランドセルに入れっぱなしにしていた携帯電話をチェックしていたら、女子が覗き込んできた。 「ずるい、何で鈴宮だけ携帯持てるの?」 「へ……」 「学校では禁止されてるのに」 別に持ちたくて持ってるわけじゃねーよ。 お父さんがむりやり……。 何て答えればいいのかわらかなくてオレが返事に困っていたら、清見先生がやってきた。 「来月の遠足の説明を始めますから。バスの席順を決めようと思います」 女子は気取った声で「はーい」とか「センセェの隣がいい!」とか。 オレの携帯からすっかり興味を失っている。 ふぅ、よかった。 オレは改めてこっそり携帯電話をチェックした。 お父さんからメールが来ている。 今日も遅くなる……。 昨日も一昨日も、その前も、そうだった。 溜まったメールは同じ内容ばっかり。 もう、それならいっそ早く帰れる日にメールすればいいのに。 今日はどこのコンビニでご飯買おうかな……。 放課後、運動場でまた友達とドッジボールをして遊んだ。 でも一人、また一人、塾や習い事で減っていき、最後に残ったオレは鉄棒に寄りかかって残されたボールを意味もなく抱いていた。 「鈴宮君」 わ、びっくりした。 オレはいつの間に背後に立っていた清見先生を見上げた。 「みんな、もう帰ったんですか」 「え、あ、うん……塾とか、お母さんがうるさいからって」 「そうですか。鈴宮君、よかったら、これ、飲みますか?」 「へっ」 「ココアです。温まりますよ」 「え……やったぁ、ありがと、清見先生」 清見先生から手渡されたカップのホットココアをオレはごくごく飲んだ。 十月になって冷えてきたから、甘くてあったかい飲み物は体中に染み込むみたいだった。 暗くなってきたし、オレもそろそろ帰らなきゃ。 「先生、ごちそうさま! じゃあ、オレ、そろそろ……」 ふわぁ~。 あれ……なんか……急に眠くなってきた。 あんなにいっぱい寝たのになぁ、変なの。 ふわぁ~。 ……あれ、欠伸が……止まらない……。 「……なんか、オレ、すげぇ眠い……」

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