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血迷いラプソディ-2
十月に入って冷気の増した夜の空気は人気のない校舎にゆっくりと沈殿する。
中央棟の隅にある保健室で、明かりは点けずに、校庭から差し込む外灯の仄明かりを頼りにして、私は、硬いベッドの上でただ純粋に驚いて目を丸くしている君の表情をこの視界に刻みつける。
「保健医の先生は帰られましたよ。校長先生も教頭先生も、他の先生も生徒も、みんな」
今、学校にいるのは私と鈴宮君の、二人だけ。
「君のお父様は今日も残業のようですね。多忙でいらっしゃるようで、鈴宮君はご自宅のマンションで一人留守番をすることが多い。睡眠薬は常時携帯していましたよ。その時が来たらいつでも使えるように」
「えっと、清見先生?」
「何でしょうか」
「先生、何で……オレの指舐めてんの? 何でオレ……裸なんだよ?」
寝ている間に全ての着衣を取り去って裸にし、その可愛らしい、甘い味のする小さな指を一つ一つ口に含みながら、私は、この地球上で最も愛する君に微笑みかけた。
「その時って……睡眠薬って……先生、何言ってんの?」
本当に何て可愛いのだろう、鈴宮君は。
天然の淡い茶色の髪。
黒曜石の煌めきを秘めた二重の目。
果実のグミのように瑞々しい唇。
隅々まで滑々とした肌。
手首も足首も、平らな胸も、薄い茂みに色づく股間も、太腿もふくらはぎも、ああ、全て可愛い。
全て残さず舐め尽くしてしまいたい。
「先生、聞こえてんの?」
「もちろん聞こえてますよ。貴方の言葉、語尾一つだって聞き漏らしたくないですからね」
「意味わかんね、なぁ、気持ち悪いからやめろってば」
ああ、それだけは許してくださいね、鈴宮君。
少し伸びた爪の先を啄ばみながら私は君に向ける微笑をより深くした。
「もっと気持ち悪いこと、いっぱいしてあげましょうか、鈴宮君?」
彼は燦々たる日の光が何よりも似合う笑顔の持ち主だった。
活発で、男子のリーダー的存在で、たくさんの友達がいて、彼らに囲まれて、日々心から楽しそうに笑っていた。
しかし時にその健やかなる喜色に彩られた君が翳りを纏う瞬間があった。
それは授業中、頬杖を突いて窓の外を眺めていたり、父親の申請があって持込を許されている携帯電話をチェックしていたりするときなどに、よく見受けられた。
私はそのギャップを発見した一瞬から君に魅入られているのですよ。
ねぇ、鈴宮君?
「想像の中で何度も…こういうことをしてあげましたよ」
手の指から足の指まで、一本ずつ、付け根まで、ねっとりと舌を這わせていく。
「清見先生……なぁってば、やめろよぉ……」
ああ、こうして体の一部を口にしているだけで勃起してしまいそうだ。
怯える君の声や表情にもゾクゾクする。
だってそんな様子、今、私は初めて目の当たりにする。
きっと他の人間は知らないだろう。
青空の似合う君がそんな風に強張る様子など。
湧き上がるのは傲慢なる優越感。
もっと君のいろんな表情が見たいな。
「!」
私は強張る君に口づけた。
想像通りの柔らかな感触。
堪らない。
見た目以上にグミに似た歯ざわりに胸が高鳴る。
薄目を開けて見下ろしてみれば君は驚きの余り凍りついている。
ゾクゾクゾクゾク。
戦慄にも似た快感が背筋を駆け上がる。
鈴宮君、鈴宮君。
君は何て可愛いんだ。
舌を差し入れてみればその体が小動物のようにピクンと跳ねた。
音を立てて口腔の唾液を啜り上げれば小さな呻き声を上げる。
あられもない興奮で私の心臓は止まりそう。
この瞬間に死ねたら本望かもしれない。
いや、もっと先へ進まなければ。
こんな序盤でまだまだ死ぬわけにはいかない。
「鈴宮君。君はもう精通していますか?」
私は喘ぎそうになるのを必死で堪えて問いかけた。
鈴宮君は、問われた内容の意味がわからなかったのか、相変わらず怯えた眼差しでこちらを見上げるばかりだ。
下顎に伝う唾液が外の薄明かりを反射していて、妖しげな艶を発している。
とてもおいしそう。
「ひゃ」
ココア味が残る唾液を舐め上げて、もう一度問いかけた。
「夢精はしましたか?」
「む……せい……? ……あっ」
どうやら問いかけの意味をやっと理解したようだ。
閉ざされた膝を割ろうとしていた私の行為を拒んで、再びきつく股を閉じ、鈴宮君は顔を真っ赤にして言った。
「や……やだよ、オレ……清見先生にあんなチンコ見せるなんて……」
チンコ。
グミのような果実の如き唇から性器を表す言葉が零れ出る、その猥褻さに私は思わず喉を鳴らしてしまった……。
「あっあっ、やだってばぁ……やだやだぁ~……っ、やだよぉ~……っ」
鈴宮君の哀願に心は痛んだが、かつてない中毒性ある興奮に射抜かれた私はその行為を止められなかった。
ペニスと呼ぶにはまだいたいけな、そう、正しくチンコと呼ぶに相応しい幼い肉片にしゃぶりついて、包皮を啄ばみ、小振りの睾丸も頬張った。
「あぁ……っ、やだぁぁ~……っ」
仰向けにした君の両足を持ち上げ、そのまま頭の方へと持っていき、謂わばでんぐり返しの状態で丸見えとなった股間に頭を埋める体勢でいれば自然と抵抗も制御できた。
「鈴宮君のチンコ……おいしいですよ、想像した以上に……早く出してごらん……君の精液、飲み干してあげますから……」
だからいっぱい出してくださいね?
「やぁぁっやっやっだめぇっ出ちゃうよぉ~~っ」
激しく頭を上下させて芯の通ったチンコを貪る。
はしたない音を立たせて根元から吸い上げては尖らせた舌先で尿道を抉り、犬のように舐め回す。
正直な体は素直に生理的現象を迎える。
待望の瞬間は訪れた。
口の中に広がる、苦味走った、独特の臭気ある白濁の味。
一滴残らず舐め干したい私は先端を口にしたまま棹を扱いた。
口の中で脈打つ感覚に恍惚となる。
粘りある精液の青臭さを舌の上で満喫し、吟味して、じっくりと飲み込んだ。
「おいしいですね……もっと飲みたいところですが……」
涙目の鈴宮君。
私が怖いのかな。
変態だと思っているのかな。
だけどこの想いは君にどれだけ嫌われたとしても変わらないよ。
「清見先生……オレ……ちゃんとするから」
震える君が懸命に絞り出すその声もやっぱり震えていて。
「明日から清見先生の言うこと、ちゃんと聞くから……だ、だから……もうやめて……やめてください」
「鈴宮君」
「ごめんなさい、清見先生」
もう限界だった。
度を越えた可愛さは罪というものだね、鈴宮君?
私は鈴宮君の体を反転させて四つん這いにすると、後ろからふっくらとした双丘の間に鼻先を突っ込み、そして……。
「!?」
濡れた舌先できつく締まっている後孔周辺を執拗に舐め上げる。
「清見先生、な、何でオレの尻舐めてんのっ?」
グチュリ。
舌尖を捻り入れて肉壁を直に突く。
「舌、入れてんの!? そんなトコ汚いのにっ」
スラックスと下着に押さえられていた自分のペニスを解放し、血管の浮かび上がる棹を扱く。
「何でチンコ出してんの!? な、何でそんな大きいの!?」
それはね、君に挿入するためだよ……なんて、童話の狼じみた回答が頭に浮かんだ。
「鈴宮君、私はもう限界です」
左右の膝裏に両手を差し入れ、容易に浮かした小さな体を落とす先には硬く勃起する私のペニスが。
先走りで滑る亀頭に、散々唾液を注ぎ込んだ後孔を宛がう。
何度か揺らしたり抱え直したりして位置を調整し、フィットする場所を見つけると、鈴宮君を支える両手の力をいくらか弱める。
しとどに濡れたそこを、上を向いた亀頭が徐々に押し開いて、君の中へと入っていく。
「ああ……」
思わず感嘆の声を洩らし、私は、そこで手を放した。
怒張したペニスが狭苦しい肉壁の奥へと一息に呑まれる。
「あーーーーー!!」
支えを失った鈴宮君は私の股座へと臀部から着地した。
ギチギチと収縮する内壁に噛みつかれて私のぺ二スは悦びの涙を零す。
もっと私に噛みついて、私を締めつけてください、鈴宮君。
迫り来る快感で死にそうだ……。
「先生のチンコっ、オレの尻の中に入っちゃってるよぉ」
「ええ……ほら、触ってごらん」
所在なさそうにシーツを掴んでいた君の手をとり、あられもない結合部へと持っていく。
「私のペニス、こんなにくわえ込んでいますよ……」
「や……っ」
服を着たままの私は全裸の鈴宮君を背中から抱き締めて腰を突き動かした。
当然、律動は潤滑には進まない。
何度も肉襞に突っかかってはあらぬところを摩擦する。
「あっやぁ……」
鈴宮君が甘い悲鳴を上げた。
君のチンコも萎えるどころか、快感に濡れて再び勃起している。
内壁を私のペニスで引っ掻かれる度に先走りをトロトロと滴らせている。
嬉しい、鈴宮君が私とのセックスで感じてくれているなんて、夢みたいだ。
「清見先生、待って……っあ、っあ、早いよぉ……変だよぉ……」
肉壷で溢れた先走りがピストンの際に淡く泡立ち、跳ねて、ふっくらとした君のお尻を卑猥に濡らしている。
「たっぷり、中に射精してあげますね、鈴宮君……女の子だったら子宮に着床するくらい……」
油断すれば一気に上り詰めてしまいそうだ。
だが、まだこの過程を堪能したい私は暴走を抑え、焦らない腰つきで鈴宮君を味わった。
後ろ抱きにして揺さぶっていた体を再び四つん這いにし、後背位で小刻みに腰を打ちつける。
放課後の保健室で鈴宮君を後ろから貫いている。
夢のような状況に自然と口元が綻んだ。
パンパンとリズミカルに小気味いい音を奏でれば君は子猫みたいにか細く鳴く。
ひっきりなしに揺れるお尻を、そこへ欲深に出入りする自分自身のペニスを見下ろして、私はこみ上げてくる射精感に腰元を戦慄かせる。
「出しますよ、鈴宮君……」
急激に早まった律動に鈴宮君は白いベッドの上で身悶えた。
私は思いきり腰を反らせて君の中へ一思いに射精した。
「あ……っ? いっぱい、これ、先生の……?」
「ええ、そうですよ、私の精子が鈴宮君の中へ……」
「うそ……じゃあ、オレ……先生の子供……ニンシンしちゃう……?」
「……」
「どうしよ、オレ……ニンシンなんて怖いよぉ……」
ああ、君は本当、どこまで可愛ければ気が済むのだろう。
「大丈夫ですよ、鈴宮君」
フフ、とつい笑ってしまう。
鼻をぐずらせる鈴宮君を後ろから抱き締めて耳元に頬擦りし、私は、戯れに囁く。
「でも、もしもそうなったら、その時は私と結婚しましょうね」
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