394 / 596
カオスといっしょ-3
「禍御守と地球。菜々樹どちら選びますか」
なかなかな選択を突きつけられた菜々樹は即答した。
「カオ君」
「え」
「どちらを選ぶのかなら、おれ、カオ君を選ぶよ」
「ほんとですか」
あれ。
急にどきどきしてきた。
「……うん」
「禍御守嬉しいです。菜々樹」
禍御守にぎゅうっと抱きしめられて、その腕の中に半ば埋もれた菜々樹。
ゆっくり優しく顎を持ち上げられて。
初めて唇にそっとキスされて。
他の禍御守からも順々にキスされた。
強く拒むことができずにきつく目を閉じて真っ赤になりながらも健気に受け止めていた菜々樹に最後のキスが。
…………くちゅ
「んっ!」
舌を入れられて菜々樹はとうとう涙目に。
相手はdark禍御守だった。
冷たく濡れた舌先が菜々樹の口内を執拗に彷徨う。
唇伝いにもたらされる違和感に菜々樹はつらそうに呻吟し、ビクビク震えてしまう。
だめだよ、カオ君に対してこんな反応、失礼だよ。
でも恋人同士がするキスだよね、こういう……深いのって。
そもそも普通のキスだって初めてなのに。
震えを止めてやるように元の禍御守は背中から菜々樹を抱きしめた。
キスしているのは自分だ、だから何の苛立ちも湧いてこない、むしろ満たされる。
「菜々樹。好きです。菜々樹」
くちゅくちゅとしつこくキスされて涙目の菜々樹に囁きかけると抱擁にもっと力を込めた。
お人よしの菜々樹はやはり拒めずに、でも禍御守への嫌悪感はなく、むしろ全身が切なくなって、そんな自分自身の反応にまた羞恥が増して、自己嫌悪が湧いてきて。
「あ」
ソコに掌をあてがわれるとヒクリと震えて、ぼろり、とうとう涙した。
dark禍御守はさっきまで口内に浸からせていた舌先で菜々樹の雫を舐めとった。
「ご、ごめんなさい、カオ君」
「どうして謝る、菜々樹?」
「だってこんな……おれ……」
ぼろぼろ泣き始めた菜々樹に愛しさが止まらない禍御守一同。
「かあいいねェ、菜々樹、イイコイイコ」
「菜々樹ぃ、こうしたらきもちいーの!?」
「……ぐすん」
脱がされたパジャマのズボンとぱんつ。
恥ずかしくて死んでしまいたい菜々樹のソレに……おふざけ禍御守とごきげん禍御守と泣き虫禍御守が同時に舌で触れてくる。
素直な反応を見せていた熱源に這う、尖らされた湿った先端。
まるで大好物を食べるような舌遣い。
満遍なく舐められるペニス。
容赦ない不慣れな刺激に下半身がかつてないくらい火照る。
恥ずかしさの余り言葉も出ずに禍御守の腕の中で菜々樹はしゃくり上げた。
「わァ、ぴくぴくしてる」
「なんかぬるぬるしたの、でてきた!」
「……ぐすんぐすん」
こんなの無理だよ。
死んじゃう。
どうにかなりそう。
どうしたらいいの。
「んん……っはあ……っ」
「菜々樹、大丈夫だ、安心しろ」
涙が止まらない菜々樹を覗き込んでdark禍御守は言う。
「禍御守に身を委ねろ」
「カオ君……」
「菜々樹。好きです。禍御守といっしょです。これから。ずっと」
「ッ……んーっ!」
菜々樹は痛々しげに仰け反った。
迸った絶頂の証。
汗ばんだ肌を波打たせて、唇をぎゅぅっと噛み、成す術もなく先っぽから吐き出してしまう。
「わァ」
「すごーい!」
「……菜々樹……禍御守といっしょ、泣いてるの……? どこか痛いの……?」
体を起こした泣き虫禍御守にヨシヨシと頭を撫でられ、まだ息切れしていた菜々樹は咄嗟に涙を拭い、彼に笑いかけた。
「ううん……っ痛くない、大丈夫……平気だよ……心配させてごめんね……?」
ぼふん!
「えっ」
「ばぶ」
五番目のばぶばぶ禍御守にスリスリ擦り寄られて菜々樹はまだ呼吸が落ち着かないながらも目を見張らせた。
「カオ君、は……一体いくつまで……分裂するの?」
「禍御守。無限です。菜々樹」
「ばぶー」
重なり合う枝葉の狭間から日の光が零れ落ちる昼下がりの森。
「……ん」
落ち葉のベッドに横たわって絵本を読んでいた菜々樹はいつの間にか眠りに落ちていた。
そのそばに寄り添う禍御守。
まるで母星<ジェーン>の鼓動に耳を傾けるかのように眠る菜々樹の髪を青白い指でそっと梳 る。
すると。
幼子じみた振舞で菜々樹が禍御守の指を掴んだ。
「菜々樹」
大好きなぬいぐるみを抱きしめて安心するように、禍御守の指をきゅっと掴み、あどけない寝顔で菜々樹は眠り続ける。
ぼふん!ぼふん!ぼふん!ぼふん!ぼふん!
「かわいいネ、禍御守の菜々樹」
「禍御守も! もっとそばで菜々樹の寝顔見ようっと!」
「……しー……菜々樹、起きちゃうよ」
「可愛い菜々樹、きっとお前と出会うために禍御守は<ジェーン>に生まれ落ちた」
「ばぶー」
禍御守が膝枕した菜々樹に群れる禍御守たち。
母なる<ジェーン>で今日も明日も、永遠に、彼とともに。
end
ともだちにシェアしよう!