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ぎぶみー放課後-3
翌日の午前中、天音担当の現代文の授業にて。
「くしゅん!」
天音の説明が冬森による盛大なクシャミで遮られた。
「あ。サーセン。続けてどーぞ」
窓際の席で鼻をずるずる鳴らしている冬森を一度見、浅く頷いた天音はテキスト片手に説明を再開した。
鼻の天辺を赤くして、机にもたれて片頬杖を突き、床に両足をだらーんと伸ばした凄まじく姿勢の悪い冬森は。
テキストを淡々と読み進める天音の声と姿に神経を酔わせていた。
どーすっかな、どーにもなんねーか。
あーセックスしてぇ、そーいえば最近ぜんっぜんしてねぇ。
すげーちんぽでケツ奥ガンガン揺さぶられてぇ。
ん。いや。
すげーちんぽじゃなくてもいーか。
俺より身長あって。
女みたいに華奢なわけじゃなくて、でけーのに、キレーな手で。
イイ声で「冬森」って。
さっぱりくどくない和風な目で。
天音とキスしてぇ。
けど。
きっと一生無理。
だって、さ。
『今、冗談でも冬森とこんなことは絶対にできない』
昨夜からずっと堪えていた涙が褐色頬にぼろり、溢れ出た。
しかも最悪なことに天音にそれをバッチリ目撃されて。
「ッ……具合悪いんで保健室行ってきまーすッ」
慌ててセーターで目元を乱暴に拭った冬森は騒がしい足取りで教室から廊下へ飛び出した。
駆け足で授業中の教室前を通り過ぎていく。
ガラリと扉が開かれて「何やってんだ、冬森!」と怒鳴られて「便秘解消間近なんでッ」とホラをふいて先を急いだ。
どーするよ、保健室行く? トイレでシコる? このまま早退すっか?
だめだ、シコっても、これまでの誰かとヤりまくっても、だめだ。
セックスしてぇ。
天音とシたい。
ぶっ壊されるくらいセンセーに……。
「冬森」
階段を駆け下りていたら急に片腕を掴まれて冬森はあわや踏み外しそうになった。
びっくりして振り返ればセックスしたい相手が真後ろにいた。
特に騒がしいわけでもなくクラスメートの中心にいるようなリーダー的存在でもなかったが。
目立つ生徒だと思っていた。
堂々と居眠りする、成績不良、よく授業をさぼる点は抜きにして。
『ごちそーさま、さよーなら、です』
マンションを出て常夜灯の下を去っていく彼の後ろ姿をいつも窓辺から見送っていた……。
「セッ……」
「せ?」
「……クス」
「くす?」
「ッッ……なんでもねーよッ、つーかなんだよッ、殺すつもりかッ、危ねーだろッ」
「大丈夫なのか」
「へっ」
「具合は。熱、あるのか?」
「あ、わかんね、はかってねーし」
確かに熱い。
センセ、不意打ち多すぎんだよな。
いきなり全力で手とか腕とか掴んでくっから、なんか、受け身がとれねぇっつーか。
今だって腕ぎゅうぎゅうされてっし。
「痛ぇよ」
階段の踊り場に落ち着いた冬森がぶっきら棒にそう言えば。
真正面に立った天音はもう片方の腕も全力で握りしめてきた。
「へっ?」
「冬森」
「い、痛ぇって、何だよ、胴体から俺の腕むしり取るつもりかよ」
「俺と交際してほしい」
冬森は目をぱちくりさせた。
天音先生はぱちくり目の生徒に構わず台詞を続ける。
「昨日、お前が部屋を出ていった後、彼女に会いにいった」
「ッ」
「別れてきた」
「う、え、ぇ?」
「昨日、お前が俺に……ああいうことは恋人がいる身で受け入れるものじゃないだろ」
『今、冗談でも冬森とこんなことは絶対にできない』
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