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ぎぶみー放課後-4

「……おぇぇ」 「昼休みに言おうと思っていたんだが……冬森?」 「おぇぇぇぇ」 「大丈夫か? 冬森?」 目の前でえづいたかと思えばガクリと項垂れた冬森に天音は目を見開かせた。 「冬森、救急車呼ぶか?」 冷静な風で実はてんぱっている天音に、深く俯いた冬森は、喉奥で「……ククク」と笑い声を。 「あーーー……なんだそれ……センセー、天然記念物みてぇ。オオサンショウウオ? はーー……あははぁ……」 「冬森、大丈夫なのか」 天音が力を緩めると今度は逆に冬森が眼鏡教師の両腕を掴んだ。 微かに全身震えている体の支えにして。 マジかよ、嬉しい、セックスしてぇ、眠ぃ、安心したら腹へった、明日休みだウェーイ、バラバラな感情が一気に押し寄せてきて、褐色生徒は……泣き笑い。 「あほ真面目、くっそ真面目……どこまでイイコちゃんなんだよ、天音センセ」 自分に縋りついて、微かに震えている、ぽろっと涙を零して笑った冬森に。 天音はキスした。 「すまない、授業に、教室に戻る」 天音は階段の踊り場に冬森を残して生徒が待つ教室へ去って行った。 ひんやり冷えた校舎の片隅に残された冬森は……ぼふぅぅッッ、さらに増した熱に頭が爆発しそうになるのだった。 「今日、補講はやめておこう」 放課後一番、スクバを提げた生徒が意気揚々と下校する中、廊下で顔を合わせた冬森に天音はそう言った。 「今夜はあたたかくして早く寝なさい」 ふっつーーーーーのテンションでいる眼鏡教師に褐色生徒は面食らった。 こいつ俺に交際申込みしてチューしてきた奴だよな? 「センセっていつもああなのかよ」 「何の話だ」 「いきなり手ぇ握ったり。ぶちゅってすんのかよ?」 眼鏡をかけ直した天音は冬森の片腕を掴むと生徒の行き来がある廊下から人気のない階段の方へ移動した。 「そういう話は他の生徒の前でやめてくれ」 「ヒミツのカンケー? なんかエロ」 壁に寄りかかって普段のテンションを装っている、本当は今日一日ほぼまるっと交際申込みや不意打ちキスに脳内占領されていた冬森に彼は答えた。 「慣れていない」 「は?」 「今までそういった類の経験が皆無だった」 「かいむ?」 「……ゼロだった。だから。勝手がわからない」 「……」 「驚かせて悪かった」 「えーと。つまり。あれ、初キスってことか? え、でも彼女とは?」 「……そういうことをする前に別れたということだ」 「じゃあ。センセって。童貞?」 デリカシー皆無な生徒の質問に淡々と頷いてみせた教師。 天音センセは童貞。 天音はどぅーーーてぇーーー……ッッ!!!!

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