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ぎぶみー放課後-5

土曜日、曇り空の昼下がり。 昨夜は天音に言われた通り早めに就寝して体調バッチリ、朝昼ごはんをしっかり食べて休息・栄養を十分にとった冬森は。 天音の自宅マンション付近をウロウロウロウロしていた。 俺、天音の携帯、番号もLINEも知らねー。 連絡とる手段がいっこもねーから。 ウチに行くしかないだろ。 それで留守とか軽く死ぬわ。 しかも帰ってこねーかなって、一時間くらいウロウロしてるとか、キモ、俺キモ。 うお。 そんで雨かよ。 どうすっかな、そこのコンビニ入っか、でもアッチから来られると見えねーし、あれあれ、俺、やばくね? ストーカー予備軍? つーかそのもの? パーカージャケットのフードをかぶってポケットに両手を突っ込み、どーするかとウロウロしていた冬森の頭上に。 「何してるんだ、冬森」 片手に食材が詰まったスーパーのレジ袋、もう片手に携えていた傘を掲げ、びっくり顔で振り返った冬森に微苦笑を返した天音。 そのまま冬森を部屋へ招き、お湯を沸かし、カチャカチャとお茶の準備を始める。 コタツに入った冬森は何とも安心感やら眠気を誘う、キッチンから聞こえてくるカチャカチャにうつらうつら。 「たい焼き、食べるか、冬森」 「……」 「ミカンがいいか?」 「……」 一向に返答がないので「もしや」と思いカウンター向こうを確認してみれば。 夜九時から朝十時まで寝ていたくせに冬森がコタツ机に見事なまでに突っ伏していた。 はぁ、あったけー、ぬくぬくサイコー。 教師宅でぐーすか昼寝していた冬森。 目を覚ませば四時過ぎ、レースカーテンに覆われた窓の外はまだ明るく、鳥の鳴き声、車の走行音、周囲の生活音がどこからともなく聞こえてくる。 雨は止んだようだ。 「んが……ふわぁ~~……げっ」 起き抜けに欠伸一発、そして口からでろんしていたヨダレを慌てて手の甲で拭って。 「お」 向かい側で眠っている天音に冬森は目を見張らせた。 冬森と同じように天板にうつ伏せ、両腕を枕にして顔を斜めにし、ぐーすかというよりスヤスヤ昼寝している。 自分にいつの間にかけられていたブランケットに気が付いた冬森、ぎこちなく教師の背中にかけた。 コタツ上の端っこに置かれた眼鏡。 頬に影を落とすくらい長い睫毛。 長めの前髪が目元にかかって、どこか別人のように感じられる。 手を伸ばした冬森は褐色指で天音の髪を横へ梳いた。 閉ざされた純和風まなこ。 やんわり結ばれた唇。 いつになく紅潮した頬。 指先でなぞってみれば。 滑々していて、ほんのり微熱で、夢みたいな感触。 「……ん」 頬に添えた指先をゆっくり上下させていたら喉骨を僅かに震わせて天音は呻吟した。 ぴくんと力んだ瞼。 ひどくゆっくりと持ち上げられていく。 「……今、何時だ……?」 寝起きで掠れた声(イケボ)に鼓膜がぞくりと疼いた。 「……冬森……?」 そんな声で名前を呼ばれると猛烈にムラムラして。 隙だらけな眼鏡教師に褐色生徒はキスした。

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