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キミガダイスキ!!-9

真上に迫られて爽は毅史と目も合わせられずに強張った視線を壁の方へと避難させた。 こんな、いきなり。 心の準備なんてする暇もない。 嫌なわけじゃない。 怖いわけじゃない。 だけど。 だけど……。 「嫌か?」 爽は壁に向けていた視線を移動させ、ためらいがちに毅史を見上げた。 ベッドに両手を突いた彼はかつて見た事のない真摯な顔つきで自分を見下ろしている。 直接触れ合っているわけでもないのにその体温が伝わってきて、爽は、涙が込み上げてきそうになった。 「僕、男だよ?」 爽の問いかけに毅史は馬鹿げた質問とでも言いたげにフンと鼻を鳴らし、きっぱり断言した。 「俺は他の誰でもない泉原爽がいいんだよ」 「高比良君」 「あんなバカな奴の事なんか忘れろ、爽」 大きな掌で頬を撫でられて、爽は双眸を潤ませ、一気に熱せられた肌から緊張の糸を払い落とした。 「無理なら、俺が忘れさせてやる」 ベッドが僅かに軋んだ。 毅史の後頭部に手を回した爽は、目を閉じて、自ら彼にキスをした。 「僕、もう忘れたよ?」 先手を取られて一瞬動じたものの、毅史はすぐさま顔を離した爽にゆっくりと笑いかける。 「そうだったな」 火照った頬を掌で抱き込んで毅史は爽にキスを返した。 淡々しい色合いの柔らかな唇の感触を十分楽しんで口内に舌を滑り込ませる。 「ッ」 舌が舌に絡みつく。 口腔が普段よりも濃厚に濡れて、息遣いは乱れ、口元が力なく弛緩する。 部屋の静寂を際立たせるような水音が響く。 爽は切なげに眉根を寄せた。 毅史は自分に回されていた爽の両腕が余計な力を失ったのを知り、うっすらと目を開ける。 シーツに突いていた手を移動させ、爽の肌に直に触れようと、オフホワイトのベストの中へ潜り込ませた。 「ッ、あ」 シャツを捲り上げられて爽は竦んだ。 くすぐったい脇腹に他人の手を感じて再び緊張の糸に全身を縛られる。 忘れかけていた羞恥心が心身を支配して、まどろんでいた意識を無理矢理鮮明にさせられた。 「敏感だな、お前」 爽に覆い被さった毅史が笑う。 自分の手から逃れたそうにしている華奢な体の意志は汲み取れたが、快く解放してやれる程、彼はお人よしでもなかった。 「何か、くすぐったくて」 「慣れろよ、最初だけだから」 「で、でも、ン!」 離れていた唇がまた戻ってきて巧みなキスを再開した。 下唇を甘噛みされ、心地いい陶酔感を取り戻した爽の肢体はくにゃりと脱力する。 毅史はそうして彼をリラックスさせ、朦朧とした意識に追い込むと、日焼けしていない肌に置いていた手をそっと動かした。 「ンン……っ」 爽は身を捩った。 脇腹を撫で上げる毅史の手つきに過剰反応し、塞がれた唇の隙間から唾液を溢れさせる。 毅史は心持ち頭を起こして、彼の反応が嫌悪感を表しているのかそうでないのか確認し、答えがわかると次の行動に及んだ。 「ひゃっ」 耳朶に歯が立てられた。 爽は上擦った声を上げて毅史のシャツを握り締める。 「ッ、あッ」 毅史の手が肌をなぞる度に爽は打ち震えた。 耳朶から送られてくる些細な刺激も手伝って、おかしなくらい昂揚してしまう。 脇腹に限らず、肌の上のどこもかしこも多感になっており、毅史の腕を払い除ける余裕など微塵もなかった。 胸の突端に筋張った指先が届く。 爽は首をすぼめた。 「まだくすぐったいか?」 耳元で聞こえる声が堪らない感覚に追い討ちをかける。 くすぐったいという範囲を超えた、明らかな快感に悶えて、爽は恐々と首を左右に振った。 「あ」 毅史は爽の小さな突起を抓った。 親指と人差し指で挟み込んで、ゆっくりと摩擦する。 他人の手に弄くられてこんなにも際どい快感を全身に及ぼすなんて、爽は、全く知らなかった。 こんなの、本当におかしくなりそう。 シーツに後頭部を擦りつけて耐えていた爽は、シャツを捲り上げられて、毅史の面前に滑らかな肌を曝した。 ピンク色の乳首はまだ愛撫を受けていない方までもが膨れ上がっていて、ツンと隆起している。 毅史はその片方に顔を寄せて悪戯に息を吹きかけた。 「ぁッ」 爽は反射的に顎を引いて毅史を窺った。 丁度、毅史が突起を弄くる手の動きを休めずに、もう片方を口に含もうとしているところで。 「だ、駄目!」 咄嗟に身を引き、爽はヘッドボードに勢いよく背中をぶつけた。 「……僕、これ以上されたら」 「……」 「どうしよう、こんなの……何かすごすぎて……」 爽は股間にくすぶる熱をスラックス越しに押さえ、上気した頬で毅史にそう言った。 互いの唾液で濡れた唇が艶やかな光を放っている。 大きな双眸はついさっきまで与えられていた快感の余韻を引き摺って、色っぽい愛らしさに漲っていて。 起き上がった毅史は縮こまっている爽の片膝に手を伸ばした。 「見せて」 「そ、そんな、だって・・あ」 両膝を開かされて、爽は気恥ずかしそうに正面から顔を逸らした。 「ラブホでイクのは当たり前」 自分のベルトが取り外される際の音を聞いて、爽はおっかなびっくりに毅史を見下ろしてみる。 「俺、爽がどういう顔してイクのか見たい」 ファスナーが全開にされて、スラックスと共に下着がずり下ろされた。 「だから、イッてもらわなきゃ困る」 「あ」 毅史の手によって取り出された爽のモノは、若干硬くなり、先走りの雫にうっすらと濡れていた。 毅史は躊躇もなしにその雫が溜まった部分を親指でなぞった。 背筋が戦慄いて、爽は目を瞑る。 何度か往復されると甘ったるい声音を洩らし、さらに白濁した雫を滴らせた。 今度は、毅史はそれを尖らせた舌先で舐めとった。 爽は驚くよりも先に、あられもない快感に貫かれて喉を反らした。 「あ……ん」 濡れそぼった先端を唇で愛撫されて。 執拗に隈なく湿らされる。 器用な舌遣いは余念がなく、爽は露骨に喘いで、もどかしげに何度も壁に頭を擦りつけた。 「あ、だめ……!」 爽は涙目になって毅史を見下ろした。 舌端で裏筋を舐め上げていた彼は上目遣いで頭上に注目していて、その三白眼と目が合った瞬間、爽は大きく身震いした。 放出されたものは毅史の掌に受け止められた。 恍惚とした一時に意識を絡めとられた爽は、しばし我を忘れて掠れた呼吸を繰り返した。 「多感だな、お前」 毅史はティッシュで手を拭い、ベッドの端にて無造作に胡坐を組んだ。 「感度良すぎるんだろうな、多分」 虚脱しかかっていた爽は、極力抑えられてはいるけれども愉しげな笑い声を耳にして、パチパチと瞬きした。 「おい、大丈夫かよ?」 汗ばむ額に張りついていた前髪を掻き分けられて爽の意識は見る間に覚醒した。 「う、うん、平気」と、言って、シーツの上にへたり込む。 毅史はそんな爽の頭を撫でてやり、真っ赤になった耳朶を戯れの延長で軽く抓った。 「ちゃんと帰れるな?」 「?」 「休憩で入ったから。ま、後一時間以上はあるけど」 脱がされたスラックスやベルトを胸元に押しつけられて、爽はまごつき、俯きがちとなって毅史に尋ねた。 「しないの?」 毅史は苦笑した。 片膝に頬杖を突いてバスルームの方を見、珍しくため息をつく。 渡された衣服を胸に抱いたままの爽は戸惑い気味に小首を傾げた。 「お前、今ので結構応えただろ? だから今日はこれで終わり」 「え、でも」 「何だよ?」 「高比良君のイク顔、見てない」 毅史の頑丈そうな膝に掌を押し当てると次の言葉がスムーズに口の外へと転がり出た。 「高比良君がくれる痛みなら我慢できるよ」 僕じゃ……だめ……?

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